老化の原因を探り、食い止める、またはゆるやかにする医学
高齢化が進む日本において、最近、熱い視線を集め始めているのが「アンチエイジング(抗加齢)医学」──加齢による老化現象を食い止めようという、新しい分野の医学です。ここでは、アンチエイジング医学の意義や、生活の中ですぐにも実践できるアンチエイジング法、さらには専門施設で行なう最新療法などについて、慶應義塾大学医学部教授の坪田一男さんに解説していただきます。
―アンチエイジング医学とはどのような医学なのでしょうか。
アンチエイジング医学は、アメリカで1990年代から始まった新しい医学です。それまでの医学は、老化に伴う身体の変化に対しては「年をとったら、しかたがない」という感覚で見過ごしてきました。しかし、アンチエイジング医学では、極論としていえば老化も病気の始まりで、制御可能な身体の変化と考え、それを前向きに食い止めようとするアプローチがなされます。具体的には、食生活の改善や運動など、老化を克服する習慣やケアを生活の中に積極的にとり入れ、若さを保つというものです。
―アンチエイジングを実践するとどんな効果が期待できますか。
加齢に伴い発症するさまざまな病気――動脈硬化や脳血管疾患、心筋梗塞など――は、生活習慣を変えることで、ある程度予防が可能になります。高齢化が進む日本において、寝たきりにならず元気で長生きすることは多くの人の願いですから、アンチエイジング医学の果たす役割は非常に大きいといえます。また、中高年のみならず、老化はまだ先のことだと思っている若い人でも、アンチエイジングを心がけることで、疲れにくい、あるいは病気にかかりにくい強い身体になり、仕事や趣味に充実した毎日を送ることができます。つまり、アンチエイジング医学の概念とは、病気になってから治療するのではなく、加齢に積極的に立ち向かい、病気を未然に防ぐ、そしてより元気に健康長寿を目指すというものです。