男性も“強迫性買物”に陥る
米国成人の20人に1人が買物を止められない、いわゆる“買物依存症”的状況にあるといわれるが、これは女性に限られたものではなく男性もこの「強迫性買物 (購入)compulsive buying」を患っていることが、米スタンフォード大学(カリフォルニア州)心理学名誉教授のLorrin Koran博士らの研究で明らかになった。研究では、男性は精神疾患で治療を求めるのを「男らしくない」と考え、問題を認めたがらないとしている。
同博士によると、強迫性買物とは、単に「時々派手に買って後悔する」のではなく、物を買いたい衝動が常にある状態をいい、多くの場合、買物時間が仕事や家族との時間を徐々に奪うようになる。患者は、買物中は高揚しているが、それが後に後悔と苦悩に変わる。根本原因は不明だが、英サセックス大学心理学のHelga Dittmar氏は、物質に対する高い価値観と自己像の希薄さの2つの危険因子を挙げ、「物を購入することが自己改善への道」と見なす傾向があると述べている。
Koran博士らは、成人2,500人以上への電話調査を実施し、被験者のデータを標準的なスクリーニングツールである「強迫性購入評価法」を用いて検討した。その結果、5.8%が強迫性購入の領域に入り、男女別では、女性6%、男性5.5%とその差はわずかであることが明らかになった。また強迫性購入者はそうでない者に比べ年齢が若く、年収は5万ドル(約590万円)に満たなかった。男性で見られる特徴は、カメラ、CD、書籍、工具など技術系の製品を求め、病的収集がより顕著で、オークションに熱中しやすいこと。
このような患者は、結局は大きな借財を抱え、後悔と恥辱に埋もれることになり、また自殺リスクに結びつくことも指摘されている。こうしたことから、両氏は「強迫性購入」を心理学的・精神医学的治療法の標準ガイドブック「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」(精神疾患の診断・統計マニュアル)の改訂版に正式に含めるよう主張している。
Koran博士は「抗精神病薬や精神療法などの効果的な治療法が存在しており、患者自身が進んで治療を求めることが重要」と述べている。今回の研究結果は、米医学誌「American Journal of Psychiatry」10月号に掲載されている。