減量薬は本当に有益か?
米国では何百万人もの人が体重を減らすための薬剤を使用しているが、その長期的なリスクと利益は不明確であるとのカナダ研究者による見解が、英医学誌「The Lancet」1月6日号に掲載された。
この研究は、アルバータ大学のRaj Padwal博士とSumit Majumdar博士が、これまでに発表された減量薬のリスクと利益に関する研究をすべてレビュー(再検討)したもの。その結果、例えばsibutramine(商品名:Meridia、編集部注=日本国内未承認薬は英文表記)には、いくつかの心血管系危険因子(リスクファクター)を改善させる効果がみられたものの、一部の患者では血圧が上昇することがわかった。
一般に知られる減量薬には穏やかな減量効果はみられるものの、それによって過体重や肥満による心臓発作、脳卒中および糖尿病のリスクが本当に軽減するかを判断するには、さらに長期的な研究が必要だと両博士は述べている。これまでの研究は期間も短く、心血管系の疾患および死亡についての情報は提供されていない。長期的な利益とリスクを評価する研究は進行中だが、答えが出るまでには時間を要し、その間に減量薬が何年間も市場に出回り続けることになるという。
Padwal博士は、減量薬を処方する最終目標は美容的なものではなく、健康状態を改善させ心血管疾患のリスクを低下させることだと指摘。医師は処方にあたって、それが患者にとって有益か、リスクを高めることにつながるのかを十分検討する必要があると述べている。
米エール大学(コネチカット州)医学部予防研究センター長David L. Katz博士によると、市販されているsibutramineおよびorlistat (Xenical) には重大な副作用の可能性もあり、米国で間もなく市販が予定されている新薬rimonabant(Acomplia)は、時間とともに徐々に効果がなくなる可能性が複数の研究で示されているという。先進国に蔓延(まんえん)する肥満は薬剤で解決できるものではなく、毒性や副作用による大きな犠牲なくしては、薬剤でヒトの代謝作用を根本的に変えることができるとは考えられないとKatz氏は述べている。