怒りは肺機能を低下させる
長期にわたる敵意や怒りの感情が肺機能に損傷を与え、加齢に伴う肺活量の低下を加速させることが、米ハーバード大学(ボストン)医学部の研究で明らかにされた。高齢者において、敵意や怒りは心疾患や喘息などを含む他の多くの健康障害に関与しているが、これら感情は慢性的な気道閉塞をもたらし、ひいては肺にも悪影響を及ぼすことが考えられる。
米医学誌「Thorax」8月31日オンライン版に掲載された今回の研究は、45〜86歳の男性670人を対象に実施された。1986年の研究開始時での怒りのレベルは標準スコア(尺度)で平均18.5ポイントであり、数値が高い人ほど肺機能は低かった。その後8年間で3回、異なる時期に再測定が行われた。開始時に肺機能が低かった男性は、測定のたびに悪化しており、喫煙や学歴などの因子を調整した後も関連性に変化はなかった。
研究著者で同大医学助教授のRosalind Wright氏は「研究結果は、ストレスや敵意などネガティブな感情が、環境中のアレルゲンのように免疫機能を混乱させ、炎症の引き金となる可能性を示唆している」と述べる。
ただし、怒りの感情と肺機能低下の関係を「因果関係」と特定しているわけではなく、正確な影響度を示すにはさらなる研究が必要とされる。また、被験者のすべては高齢の白人男性であり、他の人口集団には当てはめることはできないという。
それでもWright氏は、研究結果には実用的意義があるという。「肺機能の急速な低下の要因を特定すれば、医師や患者はそれに対抗する手段を講じることができる。また患者に感情や性格、ストレスのレベルなどに注意を向けさせれば、生活習慣を変え、認知行動療法などを行うことも可能になる」と述べている。