高脂肪食の悪影響を運動で回避
高脂肪食を摂取しても、その1〜2時間後に運動をすれば動脈への潜在的なダメージが回避できることが、医学誌「European Journal of Applied Physiology」9月号掲載の研究で報告された。研究著者で米インディアナ大学運動学教授のJanet P. Wallace氏は、運動のためにジムへ行く必要はなく、ウォーキングで十分だとしている。
同氏によると、脂肪食を摂取すると、血管は血流量の増加に反応する拡張能を失い、この状況は食後4-6時間でピークに達することから、同時間帯では動脈は心疾患患者の状態に置かれているという。
Wallace氏らは、食後の運動が及ぼす影響を検討するために、対象となった25歳の健康な男性5人と女性3人に、低脂肪の朝食摂取、高脂肪の朝食摂取、高脂肪の朝食摂取後に運動の3種類のシナリオをすべて体験してもらった。運動は食後2時間にトレッドミルで45分間、中等度の速度で歩くという内容。また、高脂肪食の脂肪含有量は45gで、低脂肪食は実質的には無脂肪で、カロリーはどちらも940kcalだった。
評価は、血圧カフ(測定器)を用いて食前食後に、上腕動脈の血流量を測定して行った。上腕動脈は冠動脈の状態を反映する。その結果、高脂肪食摂取のみでは、上腕動脈拡張は6%から4%に低下。低脂肪食では、6%から6.5%にわずかに改善、高脂肪食後に運動したケースでは、6%から8.5%に上昇し、運動が高脂肪食後の動脈拡張に効果のあることが示された。Wallace氏によると、理想的な範囲は6〜10%という。
Wallace氏は「高脂肪食に対抗するには運動が非常に効果的だということが明確に示された。食前の運動効果も検討してみたいが、おそらく同様な結果が得られるものと思われる」と述べている。
しかし、米国栄養士会(ADA)スポークスウーマンのJeannie Moloo氏は「研究結果は、若くて、健康で、肉体的に活発な成人という限られた集団にのみ適用可能であることを認識しておく必要がある。被験者の数は8人と少なく、男女間の反応の違いを述べるのは難しい」と指摘する。
両氏とも、今回の研究結果は、高脂肪食を欲するがままに摂取できることを意味しているのではないと警告している。