スキンケアや生活習慣で皮膚を守る大人のアトピー性皮膚炎
大人のアトピー性皮膚炎は、子どもの頃に発症し、よくなったり悪くなったりを繰り返しながら大人までもちこすタイプと、もともとアトピー素因がありながら子どものうちには発症しないで、成長してから突然に発症するタイプがあります。そして大人の症状の特徴は、首から上に出やすいことです。人目につくところだけに、つらい思いをする人が多いようです。
大人のアトピー性皮膚炎が増えている原因としては、昔に比べて、生活環境のなかでアレルギーを起こさせたり、敏感な皮膚を刺激するような物質が増えていることがあげられます。大気汚染、ダニやカビが繁殖しやすい気密性の高い建物、洗剤や化粧品などに添加されている化学物質の増加、不規則な生活やストレスなどは、アトピー性皮膚炎と深く関わっています。
アトピー性皮膚炎の症状は、薬だけで魔法のように治すことはできません。薬物療法、スキンケア、そして生活習慣を含めた毎日の暮らし方が治療の3本柱となります。このうちのどれが欠けても、治療はなかなかうまくいきませんし、治ったとしてもすぐに再発してしまいます。
アトピー性皮膚炎の治療の第一目標は、かゆみを抑えながらできるだけ早く炎症を抑えることです。ステロイド外用薬は、その副作用ばかりがとり上げられ、抵抗がある方も多いようですが、炎症を抑える薬として、現在ステロイド外用薬の右に出るものはありません。逆に使わなかったために炎症をくい止められず、悪化させてしまうことが多々あります。
ステロイド外用薬には、強さによって五段階のランクがあり、作用が強くて副作用が出にくいタイプも出てきています。
また、2年前に新しく認可されたタクロリムス外用薬は、アレルギー反応を抑制することで炎症を抑える薬で、副作用が出ないことで注目されています。
そのほか、軽い炎症に使う非ステロイド抗炎症外用薬、かゆみを抑える抗ヒスタミン薬、アレルギー反応を抑えるときに内服する抗アレルギー薬、感染症に対する抗生物質や抗菌薬、皮膚のバリア機能を補う保護薬などがあり、これらの薬を症状に応じて組み合わせていきます。患者はどの薬をどの場所にどんな目的で使うのか、医師の説明をしっかりと聞き、治療方針を知って塗り分けることが必要です。
症状がよくなると安心してしまい、スキンケアをおろそかにし、炎症がすぐにぶり返してしまう人が少なくありません。
スキンケアは、高血圧や糖尿病での食事療法のようなものと考えてください。いくら強い薬を使っても、スキンケアができていないと症状はすぐにぶり返し、反対に正しいスキンケアができると、強い薬を使わなくても済むようになります。スキンケアは単なる肌の手入れではなく、生活療法と考えて効果的な方法を実践しましょう。
スキンケアで大事なのは清潔と保湿です。例えば、肌が乾燥している場合は、ぬるま湯で洗うだけで十分。石けんを使いすぎて皮脂を取り過ぎるのも、ゴシゴシ洗いすぎて皮膚に刺激を与えるのも、皮膚のバリア機能を損ねてしまいます。
そのほかにも、石けんのすすぎを十分にする、お風呂ではぬるめの湯につかって汚れを浮かせて皮膚に潤いを与える、化粧品は最小限にする、ヘアスタイルやシャンプーにも注意するなど、敏感な皮膚を守る毎日の手入れが重要となります。
毎日の暮らしのなかでの生活習慣と生活環境を見直していくことも大切で、注意すべきポイントはたくさんあります。
季節や温度の変化に対応するのはもちろんのこと、衣類や寝具は刺激が少なく、ダニを寄せつけないものにする、洗濯ではすすぎ残しに気をつける、ダニやハウスダストを少なくするために室内をシンプルにする、暖房は低めにして温風が直接当たらないようにする、洗い物の後はハンドクリームをつけるなど、生活のそれぞれの場面でも敏感な皮膚に対する心配りが必要です。そのほかの要因としても、たばこの煙でかゆくなることがあり、お酒もかゆみを引き起こすことがあります。また、夜型生活でひとりで起きている時間が長いと、ついかいたりしがちです。生活リズムを守って、ストレスをため込まないような工夫をしましょう。
注意することが多くて大変だと思うかもしれませんが、自分の体質を捨てることはできません。大人のアトピー性皮膚炎では、アトピーを自分の体の特色ぐらいに考え、前向きな姿勢で皮膚の健康管理の方法を身につけましょう。