ADHD治療薬にさらに厳しい警告表示
米食品医薬品局(FDA)は、注意欠陥・多動性障害(ADHD)治療に用いられる神経刺激薬Dexedrine(一般名:dextroamphetamine sulfate)に、心臓障害リスクの警告表示を追加するよう製造元のグラクソ・スミスクライン社に通達した。この警告は、心臓の構造的異常やその他の心臓障害をもつ小児や少年が突然死した症例について記述を促すもの。また、幻覚、妄想などの潜在的な精神面の副作用についても言及している。
今年(2006年)5月にも、FDAは類似するADHD治療薬のメーカーに警告の追加を求める通達をしている。米ニューヨーク大学医学部小児研究センターのMelvin Oatis博士は、これ以外の神経刺激薬についてはすでに通達済みだという。3月にFDA小児科諮問委員会は、ADHD薬に心臓障害リスクに関する情報を追加することを勧告したが、2月には別の諮問委員会がブラックボックス警告(最もレベルの高い警告)の表示を求める決定を下している。今回の通達では、ブラックボックス警告ではなくDexedrineと心臓障害に何らかの因果関係を示唆する軽めの警告にとどまった。
米国でのADHD治療薬使用者数は、小児250万人、成人150万人と推定されている。米マイアミ大学ミラー医学部精神医学準教授のEugenio Rothe博士は、以前に比べADHDが認識され、薬剤使用も明らかに増加しているという。深刻な心血管系の副作用以外にも、小児の成長抑制の可能性や、精神疾患、双極性疾患、攻撃性などを増悪させるリスクが指摘されている。
今回の警告表示追加は小児科医や精神科医に慎重さを促すものだが、一方で患者の恐れを助長し、治療法を納得させるために要する時間を増やすことになるとOatis氏はいう。同時に警告は、薬剤副作用の再確認や、神経刺激薬、心臓リスクに関する家族歴の聴取を徹底させるものでもある。米国立衛生研究所(NIH)によると、健康な小児やほかの障害でもADHDの類似症状がみられることがあり、多くの専門家が徹底的な検査の実施と、正しい診断の重要性を指摘している。