コレステロール低下薬は大腸癌(がん)を防がない
コレステロール値を低下させるスタチン系薬剤は、直腸結腸癌(がん)リスクを減少するという期待が、2つの大規模研究で打ち砕かれた。
第一の研究は、米コネチカット大学の薬剤学教授C. Michael White博士らが行ったもの。心血管系疾患へのスタチン系薬剤の効果を調べた27の臨床試験、総数8万7,000人近い被験者のデータをメタ解析し、スタチン系薬剤を服用した人を服用しない人と比較したところ、直腸結腸癌についても他の癌についても減少はみられなかった。
過去の研究で、スタチン系薬剤を5年以上服用した人で直腸結腸癌が47%減少したという報告があり、癌予防効果への期待が高まっていたが、これには方法論に問題があったとWhite博士は述べ、今回の解析から「スタチン系薬剤の癌への効果は中立的」と結論している。この結果は、米国医師会誌「JAMA」1月4日号に掲載された。
もう一つの研究は、米国癌協会(ACS)の疫学者Eric J. Jacobs氏らが行ったもので、13万2,136人を対象とした「癌予防研究II栄養コホート」でのスタチン系薬剤の服用と直腸結腸癌の関連を調べたもの。その結果、スタチン系薬剤が直腸結腸癌を大きく減少するという仮説を支持する結果は得られず、5年以上の長期使用についても関連はみられなかったという。この結果は、医学誌「Journal of the National Cancer Institute」1月4日号に掲載された。
しかしWhite博士によれば、これはそれほど悪いニュースではないという。スタチン系薬剤が登場した当時は、これが癌を生じるのではと心配されたが、影響は中立的とわかり、スタチン系薬剤の服用を止める理由は何も示されていないし、心臓病には驚くべき効果を示す。しかし「単に癌リスクを下げたいという目的で服用しないように」とのこと。そのためなら、禁煙や食生活改善など他にすることがあるとWhite博士は助言する。
Jacobs博士は、50歳以上の男女は大腸癌検診について医師に相談することが必須と助言する。大腸癌検診でポリープが見つかれば、それが癌になるまえに取り除くことができる。
他の専門家には、この2つの研究でスタチン系薬剤の癌予防効果説が完全に否定されたわけではないとの意見もあるが、たとえ効果があっても非常に穏やかな効果だろうとのこと。