皮膚検査でアルツハイマー病を早期発見
最も早期のアルツハイマー病を簡単に検知できる皮膚検査法が、実現に向かっている。アルツハイマー病が脳だけではなく全身を侵す疾患であるという仮説に基づいた検査法で、米国科学アカデミー発行の「Proceedings of the National Academy of Sciences(PNAS)」オンライン版に8月18日掲載された。
米ウェストバージニア大学保健科学センターBlanchette Rockefeller神経科学研究所のDaniel L. Alkon博士らが開発したこの検査法は、アルツハイマー病患者の脳に蓄積する蛋白(たんぱく)であるアミロイドを分解する酵素の型に焦点を絞ったもの。炎症関連物質であるブラジキニンに曝露した皮膚細胞内で、MAPキナーゼErkという酵素の2つの型の比率に大幅な不均衡がみられる場合、アルツハイマー病の存在が疑われるという。認知症でない人やアルツハイマー病以外の認知症患者の細胞には、この比率の不均衡がみられない。
組織バンクより入手した検体30例およびアルツハイマー病と診断された患者から採取した剖検組織30例の計60例についてこの検査を実施した結果、よい成績が得られたという。疾患の期間との相関性もみられ、疾患の早い段階であるほど大きな異常が認められた。また、100例を対象とした未発表の研究でも同じくよい結果を得ており、さらに数千人規模の研究を準備中とAlkon博士は述べている。
米トーマスジェファーソン大学(ペンシルベニア州)Farber神経科学研究所のSamuel Gandy博士によると、アルツハイマー病患者の脳に形成されるアミロイド塊周辺に炎症がみられることはよく知られているが、これが全身性のものであるかどうかは、これまで十分な研究が行われてきていないという。Gandy博士は今回の研究について、大規模な研究が不可欠で、「理論的には完璧にみえる」ものの、再現性が確かめられなくてはならないと指摘している。
早期診断の重要性は、両博士とも認めている。現在、臨床試験中の新薬のすべては、最も早期の段階での治療を目的としており、これら新薬は臨床的診断に基づいて試験が行われていることからも、早期のバイオマーカー(生物学的標標)を知ることが、重要な課題となっているという。