寄生虫感染で多発性硬化症が軽減
寄生虫感染が、実は多発性硬化症(MS)患者に利益をもたらしている可能性がアルゼンチンの研究によって示され、医学誌「Annual of Neurology」1月号で報告された。過去の研究から、寄生虫感染が動物の自己免疫疾患の経過に影響することがわかっていたが、ヒトを対象に寄生虫感染とMSとの関係を調べた研究は初めてだという。
この研究は、寄生虫感染のあるMS患者12人と感染のないMS患者12人を対象としたもの。両群の患者の疾患経過はいずれも類似するものであった。約4.6年の追跡期間中、寄生虫感染群では3回の臨床的再燃(病状がぶり返すこと)がみられたのに対して、非感染群では56回の再燃がみられた。また、感染群の患者は、MSによる身体障害が増悪する比率も低かったという。
このほか、感染群ではサイトカイン抑制物質を産生する細胞の数が大幅に増大していることが突き止められた。MSには、調節蛋白(たんぱく)であるサイトカインの産生による炎症反応が関与している。
今回の知見は、寄生虫感染による自己免疫反応が、MSによる通常の炎症反応を減少させるという考えを裏付ける証拠となると著者らは述べている。