論議が続く“肥満税”
米国の大きな社会的問題となっている肥満。これに対処する1つの方策として「肥満税」(fat taxまたはTwinkie tax)が、10年以上注目を集め議論の対象となっている。この概念が最初に広く注目を集めたのは1994年、米エール大学心理学教授(当時、摂食・体重障害センター長)のKelly D. Brownell氏がニューヨークタイムス紙の論説に概略を発表したときであった。
Brownell氏は食品に対する2つの課税を提案した。1つは不健康な加工食品の購買意欲を減退させるよう7〜10%課税し、健康的な食品を援護するための大型税であり、もう1つは公的な健康栄養事業に対して長期にわたって資金提供するための課税であった。
Brownell氏は「米国の食品事情は、あたかも肥満を最大限に助長することを目的とする仕組みとなっている」という。このため、清涼飲料や脂肪分の高い食品など食品の種類によって課税の対象とするか、高カロリーまたは栄養価の低い食品に対して個々に課税するという方法を提案した。非営利団体の米国医学研究所(IOM:ワシントンD.C)によれば、近年アーカンソー州やテネシー州、バージニア州、ワシントン州などでこのような徴税が実施されているという。
カリフォルニア州やメーン州、メリーランド州でも大型の「肥満税」が実施されたが、最終的には廃止となった。これについて、Brownell氏とIOMは問題点を次のように指摘している。大きな問題は、徴収された肥満税が肥満防止の取り組みの予算として充てられるのではなく、赤字の補填に充てられることが多かったこと。また、これは基本的に累減税であり、低所得層に対する打撃が大きいほか、課税対象とする不健康な食品を決定する作業も慎重を要する点も挙げられるという。
ニューヨーク州議会議員Felix Ortiz氏は肥満税推進派の1人であり、ほかにもテレビゲームに対する課税を提案している。Ortiz氏は「米国は肥満という慢性的な流行病に冒されており、食品に対するこのような課税は解決策の1つとなると考えられる。肥満税が肥満を予防する事業のために資金を得る手段となれば、必要なサービスが受けられ、健全な生活習慣に関する適切な情報を得られることにつながる」という。