食物繊維は大腸癌(がん)の予防にはならない
これまで、食物繊維を豊富に摂取することにより大腸癌(がん)リスクが低くなるという研究結果がいくつか報告されているが、あらゆる危険因子(リスクファクター)を考慮して総合的に判断した結果、予防効果は得られないことが、米国立癌研究所(NCI)のYikyung Park氏らの研究で明らかになった。
今回の研究は、これまでの13件の研究における合計72万5,000例以上の患者データを併せて検討したもの。最初にデータを検討した段階では、食物繊維の摂取量が20%多い人は、大腸癌発症率が16%低いとの結果が得られたが、総合ビタミン剤や葉酸の投与、赤身肉や牛乳、アルコールの摂取量などの危険因子について調整したところ、「食物繊維の摂取量増大と大腸癌発症リスクの低下との間に一次関数で示される逆相関(反比例)は認められなかった」という。
Park氏は、食物繊維に大腸癌の予防効果があるとしてきたこれまでの研究結果について、「大半の結果に矛盾点があった」とする一方、今回の結果については「今後も検討を重ねる必要がある」と述べている。
米ダートマス大学医学部内科教授のJohn A. Baron博士は、結論を導くにあたり、まずは「食物繊維」の定義を明確にする必要性を指摘。食物繊維は、穀物繊維や野菜繊維、果物繊維などを含む食物を指すことが多いが、可溶性の繊維と予防効果があるとされる不溶性のものとでは大きな差が認められるが、一般に明確な区別をせずに研究が実施されてきたという。
Park氏は、食物繊維の摂取により、心疾患や糖尿病など種々の疾患の発症リスクを低下させることを示す研究結果が得られているため、引き続き摂取する必要性があることを呼びかけている。研究結果は、米国医師会誌「JAMA」12月14日号に掲載された。