フロリダの赤潮で喘息が悪化
「赤潮」の発生中にフロリダ海岸で過ごすと、喘息患者の肺機能の低下や喘息症状の原因となることが示され、米医学誌「Chest」1月号に掲載された。
メキシコ湾では毎年Karenia brevisという有毒な藻類が繁殖し、赤潮の原因となっている。赤潮発生は必ずしも目に見えるわけではないが、見える場合は海水が茶色がかった色になるという。さらにわかりやすい赤潮のサインとしては、魚の大量死による不快な臭いがある。
今回の研究を行った米マイアミ大学Miller医学部Lora Fleming博士らは、それまでに事例の報告があったことから、赤潮が喘息患者に及ぼす影響を調べるため、喘息患者100人を対象とし、海岸に行く前と、赤潮発生中に1時間海辺を歩いて過ごした直後との状態を調べた。また、赤潮が発生していない期間に海辺を歩いた後についても観察。全員に自覚症状が現れたら海岸から離れてもよいこと、指定通りに喘息薬の使用を続けることを指示した。
その結果、赤潮の発生していない時期には、1時間海岸を歩いても、肺機能および喘息の症状に統計的に有意な変化は認められなかった。しかし、赤潮発生中は、被験者が呼吸器症状を訴える確率が高く、わずかだが統計的に有意な肺機能の低下もみられた。Fleming氏によると、肺機能の低下は10%強だったという。喘息症状を生じた肺が正常に戻るまでに5日かかることもわかり、Fleming博士は喘息患者に対し、赤潮の発生期には海岸に近づかないよう注意を呼びかけている。
原因は明確にはされていないが、赤潮発生期には、この藻類が作る毒素が空中に飛散し刺激物質またはアレルゲンとして作用することが考えられるとのこと。喘息患者でない人でも、赤潮が原因と思われる涙目、鼻水、咳(せき)などがよくみられるという。米ニューヨーク大学メディカルセンターのJonathan Field博士は、この研究で「曝露から極めて短時間で有意な影響があることがわかる」と述べ、リスクの認識が必要であると指摘。さらに、地球温暖化により出現した新型のアレルゲンである可能性など、より大きな問題かもしれないという疑問も投げかけている。