父親もかかる産後うつ病
子どもが生まれた後には、母親とほぼ同数の父親も、産後うつ病になることが明らかになった。米イースタンバージニア医科大学小児医学研究センターJames F. Paulson博士らが、両親のそろった5,000家庭を対象に実施した研究によると、母親の14%、父親の10%にうつ病の症状がみられたという。これまでにもいくつかの研究で同じ結果が示されていたが、全米規模での研究は今回が初めて。この知見は医学誌「Pediatrics」8月号に掲載された。
今回の研究では、子どもが生まれたばかりの父母に対してアンケートと面接を実施し、うつ症状の有無を判断。子どもとの関わり方は、授乳、寝かせつけ、本の読み聞かせ、「いないいないばあ」遊びや子守歌などの習慣についての質問から判定された。この調査の結果、母親と同様、父親でも日常的な人との交流や活動に減退がみられたという。
父親は通常、子どもが生まれた後、高揚感を覚えるが、母親の支配が強く乳児を独占したがる場合などは、その気持ちが徐々に失われてしまう。また、この時期は妻は性的関心を失っているため、父親はそのことを心に留めておかないと、性的および感情的に欲求不満を感じる。母親の母性が極めて強い場合、父親は自分が無用な存在だと感じてしまうこともある。うつ病になった父親の行動パターンは、仕事やスポーツ観戦の時間が長くなり、飲酒量が増え、一人でいることが多くなるという。
Paulson博士は、産後うつ病を最も発見しやすい立場にある小児科医が、父親と母親の両者について積極的にうつ病検知に取り組む必要があると述べている。米ノースカロライナ大学小児科教授William Coleman博士も、「医師は母親の感情には気付いても、父親には尋ねることもしない」と指摘している。
父親の産後うつ病を検知することは、子どもの長期的な将来のためにも重要である。母親のうつ病の場合と同様に、子どもの情緒面の障害や学校生活への適応の問題ばかりでなく、健康障害の原因となる可能性もあるとPaulson氏は指摘している。