炎症と癌(がん)の関係解明に光
慢性炎症と、癌(がん)やアテローム性動脈硬化症のような疾患との化学的な関係について新たな知見が示され、生物化学誌「Nature Chemical Biology」7月号に掲載された。
感染が起きると、免疫細胞がその部位に集まり、侵入物を撃退するため特殊な化学物質を多量に分泌する。しかし、この炎症性物質は、感染部位周辺の正常な細胞まで傷つけ、細胞のDNAの損傷は細胞死や突然変異を引き起こし、癌などの疾患を招くことになる。
米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、免疫細胞が産生する炎症性物質の一つ、nitorsoperoxycarbonateという物質によるDNA損傷が、DNAらせん上の予想外の部位で生じることを突き止めた。この知見は、DNA損傷が生じる場所についての従来の説に反するもので、炎症の新しい診断・治療法開発につながる可能性があるという。
MIT生物工学部門教授のPeter Dedon博士は「炎症と疾患との関係を断ち切る新しい薬剤を作るためには、炎症の機序を理解する必要がある」と述べている。