生涯独身は寿命を縮める
生涯独身を貫くことは健康によいとはいえない、という知見が報告された。結婚が長寿や心疾患リスクの低下に関係していることはこれまでにも知られていたが、今回の研究は、別居・離婚・死別した人と、一度も結婚の経験のない人との違いに着目したもので、医学誌「Journal of Epidemiology and Community Health」9月号に掲載された。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)公衆衛生学部Robert Kaplan博士らの研究グループは、離婚、死別では子どもがいることが多いため社会とのつながりを持ちやすいが、結婚経験のない人はこのような利益がないと考えた。
この理論を検証するため、1997年の米国死亡指数(NDI)および1989年の米国健康聞き取り調査(NHIS)のデータを解析した。この結果、配偶者と死別した人の1989〜1997年の死亡率は、結婚している人と比較して40%高く、離婚または別居した人は27%、一度も結婚していない人は58%高かった。
この結果は全年齢で変わらず、心疾患以外の死因にもあてはまるという。結婚経験がない人の若年齢(19〜44歳)での主な死因は、HIVなどの感染性疾患で、高齢者の主な死因は心疾患などの慢性疾患であった。結婚の経験がないことによるリスクは、高血圧や高コレステロールによるリスクに近いという。
しかし、因果関係の有無ははっきりしていない。病弱であったり、危険な行為に携わっていたりすることが結婚しない理由であることも考えられるとKaplan氏は指摘している。米モリスタウン記念病院(ニュージャージー州)のAudrey F. Von Poelnitz博士によると、結婚していると社会との関わりが深くなり、幸福で健康長寿を望むようになるので、自分の体を大事にするのは当然のことだという。Poelnitz博士は、「幸福な人ほど健康である」と述べている。