静脈血栓症の再発は男性に多い
深部静脈血栓症(DVT)を一度発症した患者の再発リスクは、女性より男性で50%高いことが、カナダの研究で明らかにされた。「エコノミークラス症候群」としても知られるDVTでは通常、下肢または大腿の深部静脈に血栓が形成される。この血栓が肺に到達すると、肺塞栓症という致死性の状態を引き起こす。
研究共著者でマクマスター大学臨床血栓症部門責任者のClive Kearon博士らは、DVTまたは肺塞栓症で治療を受けた患者約5,400人(男女数は同等)を対象とした15件の研究データをレビュー(再検討)し、被験者が抗凝固薬治療を中止した後の血栓の再発率を検討した。
その結果、被験者のうち816人が血栓症を再発しており、内訳は男性が64%、女性が36%だった。同研究報告は米医学誌「The Lancet」7月29日号に掲載されている。
現在提示されているエビデンス(証拠)では、明白な原因もなくDVTを発症する人は、長期の抗凝固薬療法が必要とされている。Kearon博士は「今回の研究は、抗凝固薬療法のリスクと便益を検討する際には、患者の性別を考慮すべきことを示している。ただし、性別で経過が異なる理由は不明」という。
米ワシントン大学医学部(ミズーリ州)放射線学・外科学準教授のSuresh Vedantham博士は、このような知見が治療法に与える影響は明確ではなく、抗凝固薬の服用期間については、医師の間でも意見が分かれているという。同博士は「これは重大な問題であり、抗凝固薬を投与せずに再発し、肺塞栓症を発症すれば死につながる可能性もある一方で、長期に抗凝固薬を投与すれば、出血性の合併症リスクがある」と述べる。
男性への薬剤投与期間を長くするか否かという問題については、Vedantham博士は「さらなる研究が必要であり、今回の研究結果で治療法を特別変更するということにはならない」と述べている。