早起き遺伝子の仕組み解明
早寝・早起きは健康的で富と賢さをもたらすといわれるが、その睡眠パターンをもたらす遺伝子変異の仕組みが解明された。
家族性睡眠相前進症候群(FASPS)は、いわゆる「早起きヒバリ(morning lark)」の睡眠パターンを示す睡眠障害で、最も極端な症例では午後4〜5時に眠りにつき、午前1時に目覚めてしまう。FASPS患者ではPeriod 2(Per2)という遺伝子に突然変異があり、人口の約0.3%がこの突然変異をもっているという。
FASPSを研究してきた米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)Louis J. Ptacek博士らの研究グループは、今回、マウスにヒトPer2変異遺伝子を導入して「FASPSマウス」を作ることに成功した。FASPSマウスは、正常なマウスよりも4〜6時間早くから回し車を回し始め、4〜6時間早く回すのをやめるという行動を示したという。
Per2遺伝子は、体が光に反応して中枢時計をリセットするのに必要な遺伝子だが、Ptacek博士らはPer2の突然変異体では、この遺伝子が酵素による化学変化を受けることができないことを突き止めた。そのためPer2遺伝子の発現コピー数が減少し、睡眠パターンが変化するとPtacek博士らは述べている。この知見は、生物細胞学誌「Cell」1月12日号に掲載された。
Ptacek氏は、FASPSへの反応は人によってさまざまであり、早起きを楽しんで肯定的に捉えるか、問題だと否定的に捉えるかは、その人の考え方によるものだが、今回の知見が最終的には体内時計をリセットする方法の解明につながり、交代勤務や時差による睡眠障害を治療する新しい薬剤の開発をもたらすとしている。同グループは、夜型の人(いわゆる「夜更かしフクロウ(night owl)」についても遺伝子との関連があるとみて研究中とのこと。
しかし米スタンフォード大学(カリフォルニア州)ナルコレプシーセンターのEmmanuel Mignot博士は、睡眠や生物時計に影響するのは遺伝子だけではないと指摘。例えば、人は年齢とともに早起きになるが、これは遺伝子のせいではない。また体内時計の速度を変える薬剤の開発も可能だろうが、特定の酵素だけに作用し、それ以外に影響しないものにするのは容易ではないとも述べている。