閉経期のホルモン変動で関節炎リスクが上昇
閉経期に発現するエストロゲン値の低下により、女性での膝変形性関節症(OA)リスクが上昇することが、米医学誌「Arthritis & Rheumatism」8月号掲載の研究で明らかにされた。
これまで変形性関節症は消耗性の疾患とされていたが、米ミシガン大学疫学部教授のMaryFran R. Sowers氏らは、ホルモンが関節周辺の組織に影響する可能性を考え、閉経前と閉経期の女性で見られる主要なエストロゲンであるエストラジオールの血中濃度の低下に着目した。
Sowers氏らは、26〜54歳の女性842人を対象に、膝変形性関節症の発症について3年間調査した。研究開始時、75%の女性が閉経前で25%が閉経期にあった。研究開始前にホルモン補充療法(HRT)を受けていた女性はなく、10%以上がすでに膝変形性関節症と診断されていた。被験者は、研究期間中毎年、体脂肪率測定と両膝のX線撮影を受け、さらに血液および尿中のエストラジオールなどが測定された。
その結果、研究期間中に初めて膝変形性関節症を発症した女性は、発症しなかった被験者に比較して、研究開始時のエストラジオール値が低いことが明らかになった。これらの患者は、エストラジオールの分解物質である2-ヒドロキシエストロン値も低かった。
Sowers氏は、閉経前後と閉経時に一般的に発現するこうしたホルモン現象は、変形性関節症発症に強く結びついていると結論付けている。
国際変形性関節症研究協会(OAR SI)前会長のRonald Moskowitz博士は「興味深い内容だが、ホルモンの関与を説明するには、交絡因子(付随的な要因)を見なければならない。例えば、成長すれば年齢は高くなり、閉経すればエストロゲン値は低下する。つまり、関節炎はエストロゲン値の低下ではなく、加齢によるものとも考えられる」と述べる。
Sowers氏も「今回の研究結果は、閉経女性に直ちにホルモン補充療法などの治療を促すものではない。発症プロセスに関して、より幅広い視点を提供したものである」と述べている。