肥満予防ワクチンの実現に期待
肥満を防ぐワクチンが実現に近づいたとの報告が、米国科学アカデミー誌「Proceeding of the National Academy of Sciences」7月31日-8月4日号に掲載された。米スクリップス研究所(カリフォルニア州)のグループが、グレリン(ghrelin)という肥満をもたらすホルモンを標的とするワクチンを開発したという。
研究著者のKim D. Janda氏は「われわれは通常免疫システムに認識されない分子を認識させることを可能にした」と説明。これにより、免疫システムからグレリンを不活性化させる抗体が産生されるという。このワクチンをマウスに接種すると、未処置のマウスと同量の食餌を摂取していても20〜30%の体重減少が認められた。ただし、マウスに与えたのは低脂肪、低エネルギーの食餌であったため、米国人のような高脂肪の食生活に対する効果はわかっていない。
抗グレリンワクチンの開発への取り組みは他でも行われており、スイスのバイオテク企業Cytos社は、すでにヒトを対象とした試験を実施している。このワクチンはスクリップス研究所のものとは作用が異なり、グレリンの脳への取り込みを妨げるというもの。スクリップスチームは、急がず慎重に取り組みを進める方針で、ヒトでの試験は約2年後、大手製薬会社との連携のもと実施される見込みだという。摂取の方法や回数については現段階では未定。
米ワシントン大学(シアトル)医学部助教授のDavid E. Cummings博士によると、グレリン遺伝子を欠損した動物に極めてわずかな体重減少しか認められなかったことから、これまでグレリン除去が体重に及ぼす影響について疑問視されていたという。今回の研究が、この疑問に対する回答となる可能性があると同氏は述べている。