肥満者では筋肉内に脂肪を蓄積する酵素が多い
深刻な肥満の人の骨格筋は、特に脂肪を蓄積しやすくなるようにプログラムされている、という研究が報告された。筋肉は肥満の代謝メモリー(記憶)をもち、このことが肥満の人がカロリー制限をしても、体重減少に非常な苦労を要する理由の説明になるかもしれないという。
米医学誌「Cell Metabolism」10月号に掲載されたこの研究で、米デューク大学(ノースカロライナ州)のDeborah Muoio博士らは、ステアリン酸CoA脱飽和酵素(SCD-1)と呼ばれる脂肪を作る酵素が、肥満の人の筋肉ではやせた人よりも3倍多いことを発見した。
肥満と2型糖尿病では、脂質代謝の異常が見られ、筋肉内に異常な量の脂肪粒が蓄積するが、今回の知見はその原因究明に解決の糸口を与えるという。また、運動することでこの細胞のプログラムに打ち勝って、肥満の人が減量する能力を向上できるかもしれない点も指摘している。
Muoio博士は、筋肉および肥満の発達において、SCD-1が脂質コントロールに大きく貢献することが示されたと述べている。これまで、運動が筋肉代謝に変化をもたらすことは知られているが、今後の研究で、運動の増加がSCD-1のレベルを戻すか、その効果を中和する助けになるのかどうかを調べる予定だという。