胃腸の不快感、食欲不振は、夏の暑さのせい
高温多湿の日本の夏には、食欲減退もしかたがないかもしれません。水分を多く取り過ぎたり、不規則になったりなど、夏の暑さと比例して、胃腸もげんなり。自律神経のアンバランスも加わって、胃腸運動が低下し、消化液分泌などの障害が起こりやすくなっています。でも、その胃腸のトラブル、夏の暑さだけが真犯人ですか?
「なにかおいしいものを……」と考えたとき、若い人に圧倒的支持を受けているのが肉。焼き肉やステーキ店の前には、順番待ちをしている若者の姿をよくみかけます。
ところがそんな人たちであってさえも、夏も中盤以降になると、「何も食べたくない」「食欲がないよ」といった言葉が聞かれるようになります。
食生活が欧米化したのは、わずかに戦後60年。それまでの日本人の食事は、数千年にわたって米を主食とし、たんぱく質や脂肪の少ない食事を続けてきたのですから、日本人の胃腸は炭水化物を消化するのに適した構造になっているのです。そこに欧米人と同じような食事が突然始まったわけですから、胃腸が混乱するのも当然。健康なときには多少の混乱はなだめすかしながら収めることができますが、夏の間の不規則な生活や食習慣、水分の取り過ぎ、寝不足、疲労などが重なるとてきめん。すっかり調子を崩してしまいます。
さらに、間断なく襲ってくるストレス。精神的なことはもちろん、暑さも湿気も肉体的なストレスです。ストレスは消化のための胃液分泌を狂わせ、胃粘膜を荒らしてしまいます。
そこで、胃腸の消化器系のトラブルの原因を整理すると、
摂取した飲食物に直接関係している病気(食道炎、胃炎、急性腸炎など)
ストレスがひき金になって起こる病気(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、過敏性症候群など)
命とりにもなる悪性腫瘍(食道がん、胃がん、大腸がんなど)
の3つに大別することができます。
胃腸病の場合、初期症状はさまざまな不快感となって感じられます。しかし、この不快感という言葉が曲者。人それぞれの感じ方、表現のしかたが異なります。
一般的には「何となくすっきりしない」「重苦しい」というときに「不快」という表現をしますが、軽度の痛み、みぞおちのもたれ、張る感じ、胸やけ、げっぷ、吐き気、下痢、便秘、腹が鳴る、などの症状をふくめ、すべてを総称して胃腸の不快感を表現することも少なくありません。
胃のあたりに感じる不快感は、消化不良や胃・十二指腸潰瘍、腹部全体の鈍い持続痛、脂肪の多い食事をした後の痛みなどが原因になって起こってくる感覚です。
消化不良という言葉はよく使われますが、症状的には、胸やけ、げっぷ、膨満感、みぞおちの痛み、吐き気、苦い水がこみあげてくる、などが起こる状態です。
こうした不快感は、過酸症による慢性胃炎にもっとも多く認められますが、その他の病気による場合もあるので、症状が長く続くようならば一度検査をしておきましょう。
食後すぐに現れる鈍痛、不快感、膨満感のような症状は、制酸剤(重曹など)の服用で一時的に改善することがありますが、いっこうに改善されなかったり、あるいは一時的にはよくなってもくり返される場合、また次第に吐き気を増し、嘔吐がはじまったときなどには、素人判断は禁物。がんの初期かもしれませんから、専門医に受診して検査をしてもらいましょう。
ディスペプシアとは「内視鏡検査や各種検査では炎症、潰瘍、腫瘍などがないにもかかわらず、胃の膨満感や胸やけ、食欲不振などの症状を示すこと」を指します。目でみえる異常がないために、これまで「気のせい」として治療対象になりませんでしたが、各種の検査法の開発により、胃の運動低下によって、こうした状態が起こることが明らかになっています。また、こうした症状をもつ人の多くは、睡眠障害や不安、抑うつ、活力減退などを感じているそうです。
研究によると、日本人の4人に1人は、過去3カ月間にディスペプシアを体験しているそう。てっきり夏の疲れが食欲不振を起こしているのか、と思っていたら、立派な病名をもつ病気だった……なんてこともありそう。
ちなみに、ディスペプシアには、運動機能障害と感覚障害の2種類があり、運動機能障害が起きているときには「胃の筋肉の間の神経を刺激して胃の働きをよくする薬」を、知覚過敏などの感覚障害がある場合には、「抗不安剤や精神安定剤」を服用すると、症状は改善されます。