新生児を死の危険から守る
妊娠末期の妊婦は、B群連鎖球菌(GBS)の検査を受けることで、自分の子供を生命の危険から守ることができる。直腸と膣のスワブ(細菌検体の採集)でGBSの有無を確認するもので、妊娠35〜37週のすべての女性において出生前ケア(母子健康管理)の標準検査の一つとなっている。
GBSは、成人には危険性の少ないごく一般的な細菌だが、新生児には生命を脅かす存在となる。妊婦の10〜30%が保持していると推定され、新生児の敗血症や髄膜炎の最も一般的な原因となっている。適切な治療が行われない場合には、分娩直前や分娩中に母子感染し、失明、聴覚消失(難聴)、精神遅滞、身体障害などを引き起こし、死につながることもある。
米ベイラー大学医学部(テキサス州)小児科学、細菌学・免疫学教授のCarol Baker博士は、妊婦は自分がGBS保菌者であることが判明したら、出産時にまずすべきことは、抗生物質の静脈注射を受けることだという。
この治療法は、2002年に米疾病管理予防センター(CDC)が発行したプロトコルにも含まれているが、確実に細菌を死滅させるには、出産4時間前には投与を開始しなければならない。Baker博士は、病院への到着が遅れたり、早産などで間に合わないケースもあるという。
また同博士は、より優れた予防法として、妊婦や妊娠可能年齢の女性へのワクチン接種が研究されているが、この努力は行き詰っていると懸念する。他大学との共同研究で、ワクチン調製が行われ、小規模研究で安全性と効果は確認されたが、ワクチンの量産を手がける製薬会社がない。Baker博士は、妊娠自体が私的なことであり、また、あまりにも合併症が多く、企業は訴訟を懸念しているという。
米南カリフォルニア大学ケック医学部臨床産科学・婦人科学客員教授のJames A. McGregor博士は、ワクチン入手が先延ばしになることから、産科医や助産師に対し、出産時に羊膜を破らないように忠告。また、出生直後の新生児にペニシリンの筋肉注射を施す手法も検討されていると述べている。