アルツハイマー病の症状発現前に原因不明の体重減少がみられる
高齢者で、記憶力の低下がみられる前に、説明のつきがたい原因不明の体重の減少が認められるケースでは、それがアルツハイマー病の早期徴候であることが、医学誌「Neurology」9月27日号掲載の新しい研究で明らかにされた。
米ラッシュ大学医療センターアルツハイマー病センター(シカゴ)のDavid A. Bennett博士は「このような症例やこの疾患には、臨床症状が発現する前に肥満指数(BMI)を低下させる何かが存在し、BMIの低下がアルツハイマー病の過程そのものを反映していると考えられる」という。
Bennett博士らは、65歳以上の高齢者820例を対象として、平均6.6年間にわたり毎年検診を行った。検討開始時には全例で認知障害は認められず、平均BMIは27であった(過体重はBMI 25以上、肥満は30以上を指す)。このうち、追跡期間にアルツハイマー病を発症したのは151例(18.4%)であった。
1年あたりBMIが約1単位低下した被験者では、BMIに変化が認められなかった被験者よりもアルツハイマー病発症のリスクが35%高く、一方、BMIに変化が認められなかった被験者では、BMIが0.6単位増大をみた被験者よりも発症リスクが20%高かった。また、BMIの変化と認知能力の低下との間にもほぼ同じ関係が認められた。
ただし、この原因不明の体重減少とアルツハイマー病発症との間の厳密な関係はまだ明らかではない。
同大のAron Buchman博士は「新しい情報が増えるにつれ、特に病理学に対する理解は変化してきている。アルツハイマー病が認知障害の結果としてもたらされたものだけでなく、損傷を来たした脳の領域によってさまざまな症状を引き起こすことがわかってきている。体重をコントロールする脳領域がおかされれば、認知能力の低下の前に体重の減少を認める可能性はある」と説明している。