強力な抗菌作用をもつ新しい菌類を発見
北欧の松林で発見された菌類(真菌)が近い将来、最も難治性の高いいくつかの疾患から人類を救う可能性がある。米ジョージタウン大学医療センター外科教授のMichael Zasloff博士によれば、この菌類は、ペニシリンやバンコマイシンなど強力な抗生物質と同等の作用を有する抗菌ペプチドを産生し、「この抗菌ペプチドが肺炎の原因菌、連鎖球菌性咽頭炎や重度の皮膚感染症を引き起こす細菌に対して、きわめて有効であることがわかった」という。英科学誌「Nature」10月13日号に掲載された。
Zasloff博士らはマウスを対象とする実験段階を経て、プレクタシン(plectasin)と呼ばれるこのペプチドが従来の抗生物質に耐性を獲得した菌にも有効性を示すほか、安全性についても裏づけが得られたことを明らかにした。ヒトを対象とする試験でプレクタシンの安全性および有効性が確認されれば、2012年までに薬剤として市販される見込みであるという。
Zasloff博士らは、デンマークの国立抗菌薬・感染症管理センター(National Center for Antimicrobials and Infection Control)の協力を得て、多くの細菌に対するプレクタシンの効果について実験を重ねている。数種の細菌に対する有効性が確認されているが、なかでも肺炎連鎖球菌(S. pneumoniae)の臨床分離株に対して有効であることがわかっている。
専門家の間ではさらに、HIVなど他の感染症に対して有効性を示す別の菌種の発見に期待が寄せられている。