歯肉疾患と膵臓癌(がん)に関連性
歯周病などの歯肉疾患と膵臓癌(がん)リスクを関連づける、初めての強力なエビデンス(証拠)を認めた研究結果が、米医学誌「Journal of the National Cancer Institute」1月17日号に掲載された。
研究著者で、米ハーバード大学公衆衛生学部疫学助教授のDominique S. Michaud氏らは、米国の男性医療従事者5万1,529人を対象に実施されている研究の16年間の追跡調査データを検討。歯周病の男性は、そうでない男性に比較して膵臓癌リスクが64%高いことが明らかになった。これまでに歯周病と膵臓癌の関連性を明らかにした研究はあるが、喫煙の有無で比較したものではなかった。今回の研究では、喫煙者と非喫煙者別の検討が行われ、非喫煙でも歯周病により膵臓癌リスクが2倍高いことが明らかになった。
Michaud氏は「両者を結びつけるメカニズムは不明であるが、一つの可能性として、歯肉疾患による炎症が膵臓癌を促進したことが考えられる」としている。歯周病患者では、心疾患に関与する炎症マーカーのC反応性蛋白(たんぱく)の血中濃度が高く、また歯周病と心疾患の関連性を指摘する研究もあることから、炎症が癌細胞形成を促進していることが考えられる。
同大医学部医助教授のEva Schernhammer博士は「研究結果は非常に興味深い。膵臓癌は十分に知られていない疾患の一つだが、罹患すると生存率は非常に低い。今回の研究は、膵臓癌では炎症が重要な役割を果たしていることが確認された」と述べている。
Michaud氏は「今回知見は、歯や口腔内の健康に留意が必要なさらなる理由を提供している。ただし、重篤な歯周病の人は膵臓癌にすぐ直結すると心配することはない。恐ろしいがまれな疾患だ」と述べている。米国癌協会(ACS)によると、米国での2006年の膵臓癌患者数は3万3,730人、死亡者数は3万2,000人となっている。