寒さにご用心!血管の縮む冬に向けての高血圧対策
温かい室内から寒い外に出たとたん、体がキュッと引き締まり、ついでに血管もキュッと収縮。縮んだ血管のなかを同じ量の血液が通らなければならないため、血圧は高くなります。でも、その寒さに慣れたり、防寒対策さえきちんとしていれば、冬だからといって血圧上昇が問題になることはありません。問題になるのは、寒いところと暖かいところを行ったり来たりすること。そのたびに血圧が大きく変動します。そのため、普段から「血圧が高め」といわれる人は、冬は脳卒中や心筋梗塞などの病気が起こる確率が高くなります。食塩の摂りすぎや飲酒、喫煙などに注意するだけでなく、できるだけ急激な気温の変化から体を守るようにしましょう。
一般的に「血圧が高め」といわれるのは、最高血圧が130mmHg前後、最低血圧が85mmHg前後。そして「最大140 、最小90」の数値を超えてしまうと、れっきとした高血圧と診断されます。日本の成人の4〜5人に1人、50歳以上では2人に1人が高血圧といわれ、日本には高血圧の人が3000万人もいるといわれます。もはや日本人の国民病といえるでしょう。
高血圧が恐れられるのは、単に血圧が高いからではなく、放置しておくと動脈硬化が進んでさまざまな病気を併発するからです。
高血圧は動脈硬化の最大の原因となっていて、動脈硬化が進むと脳卒中や脳梗塞、狭心症、心筋梗塞など、生命に関わることにもなりかねません。また、動脈硬化が進むとさらに血圧が高くなるという悪循環に陥り、血圧が高くなればなるほど、血管系疾患で死亡する危険性が高くなるといえます。
本来は、危険度の非常に大きい高血圧ですが、高血圧自体は、苦痛となる症状がほとんどないため、初期のうちに血圧をコントロールすれば、普通の生活にはまったく支障がありません。
血圧をコントロールし、正常値に戻すためには、食塩の制限を中心とした食生活の改善と運動不足の解消のほか、肥満の解消、禁煙、アルコールを減らすことなどが重要となります。
食塩や喫煙、肥満などが高血圧によくない、ということはよく知られていますが、「寒さ」が高血圧によくないということはご存知でしょうか。
冬の冷たい空気のなかにいると、寒さ、冷たさに触れた血管は収縮します。これは冷たい空気によって体温が発散してしまうのを防ぐために、交感神経が働き「カテコラミン」と呼ばれる血管を収縮させるホルモンが血液中に送り出されるからです。血管が収縮すれば血液の通り道が狭くなり、その狭い血管を通って同じ量の血液が送られることになるので、より強い圧力が加わり血圧が高くなってしまいます。
ちなみに、夏の暑さでは血管は拡張するので、血圧が下がります。また、夏は頻繁に汗をかくために体内のナトリウムが排泄されることも血圧を下げる要因のひとつで、一般的に血圧は夏に低く、冬になると高くなるという現象が起きます。
また、寒さによる血圧の上昇は、血圧が高い人ほど大きく顕著に現れます。血圧値が正常な人は、夏と冬の差はせいぜい20mmHg以内ですが、高血圧の人はそれ以上の差になることも珍しくありません。
夏より冬のほうが高くなる血圧。そんな冬には、さらに血圧を上げてしまうような状況も多々あります。
例えば、暖かい部屋から急に寒い部屋へ出たときや、冷たい水で顔を洗うときなどには、急激な温度の変化が起こって血圧上昇の原因となり、それが引き金になって、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす可能性も高まります。
お年寄りが夜中に暖かい布団から出て寒いトイレに行ったときや、入浴する際に寒い脱衣場で服を脱いだときなどに、倒れてしまうケースがあるのは、このような理由からなのです。
ですから高血圧の人は、冬はとくに寒さ対策が必要。例えば、
1)外出のときはたくさん着込んで温かくしていく。
2)暖かい部屋と寒い部屋との差をできるだけつくらないようにする。
3)トイレや風呂場の脱衣場を暖かくしておく。
4)起きてからすぐに水で顔を洗わない。
食塩の摂りすぎや飲酒、喫煙などに注意することももちろん大切ですが、冬にはできるだけ大きな気温の変化から体を守るように気をつけましょう。