非喫煙者の肺癌(がん)には遺伝子が関与
喫煙経験のない肺癌(がん)患者の第一度近親者(親、兄弟、子ども)は、健康な非喫煙者の近親者に比べ癌の発症リスクが高いという。ワシントンDCで開かれた米国癌学会(AACR)年次集会の記者発表で、米テキサス大学MDアンダーソン癌センター(ヒューストン)疫学助教授のOlga Gorlova氏は「非喫煙者の癌発症は、遺伝的感受性が一因となっている」と述べた。
たばこは肺癌の単独かつ最も重要な因子であるが、肺癌患者の10〜16%は非喫煙者といわれる。たばこに触れたこともない患者の肺癌の原因を特定するため、研究チームは、喫煙経験のない肺癌患者316例の第一度近親者2,465例および喫煙経験がなく肺癌も認められない「対照群」318例の第一度近親者2,442例の癌発症率を比較した。対照群に比べ、肺癌患者の近親者は、メラノーマ(黒色腫)、大腸癌、頭頸部癌、前立腺癌、乳癌など、何らかの癌を発症するリスクが25%高かった。
このほかにも、以下のような結果が認められた。
・肺癌患者の近親者は、対照群の近親者に比べ腫瘍が診断された時期が約10歳若かった。
・肺癌患者の近親者が肺癌と診断された年齢が平均60.6歳であったのに対し、対照群の近親者は74.2歳であった。
・肺癌患者の家族は、若年齢(50歳未満)で肺癌を発症するリスクが対象群の6倍以上であった。50歳未満で何らかの癌を発症するリスクは44%高かった。
・肺癌患者の近親者で喫煙する人は、肺癌発症リスクが対照群よりも68%高かった。
・肺癌患者の母親は、乳癌発症リスクが2倍以上であった。
Gorlova氏は、次なるステップとして、原因遺伝子の同定(特定)の試みを挙げている。今回の研究は、この種の疫学的研究では最も規模の大きなものの一つで、男女を対象に検討した唯一の研究であるという。
年次集会では、喫煙と癌についてさらに別の側面に着目した研究が発表された。ある研究では、たばこをやめた人は、喫煙を続けている人に比べ気道を保護する働きのある蛋白(たんぱく)質CC10の血中濃度が高いことが判明。また、喫煙経験者は卵巣癌の発症リスクが高いこと、受動喫煙している肺癌患者はそうでない患者よりも生存期間が短いことなどがわかったという。