妊娠中の魚油摂取で子どもの視覚と手の協調が向上
妊娠中に魚油サプリメント(栄養補助食品)を摂取していた母親の子どもは、視覚と手の動きの協調関係が優れていることを示したオーストラリアの小規模研究が、医学誌「Archives of Disease in Childhood」オンライン版に12月21日掲載された。
一般に「魚油」として総称されるオメガ-3脂肪酸は、オメガ-6脂肪酸と同様にヒトの必須栄養素で、ホルモンバランスから免疫機能まであらゆる健康面で影響を及ぼすほか、胎児の眼および脳の発達にも大量に使われ、小児の初期の発達にも重要と考えられている。一部の魚類には水銀含有の心配があるため、魚油サプリメントの人気が高まっている。
ウェスタンオーストラリア大学(パース)のグループによる今回の研究では、妊婦98人が1日4gの魚油サプリメントまたはオリーブ油サプリメントのいずれかを、妊娠20週から出産まで摂取。生まれた子が2歳半になった時点で、成長と発達の検査を行い、言語、行動、実用的推理および視覚と手の協調関係について調べた。
幼児72人について検査した結果、言語能力および成長の面では、母親の魚油サプリメント摂取による差はみられなかった。しかし、母親が魚油を摂取していた幼児は、摂取していなかった幼児に比べ、視覚と手の協調関係が有意に優れていることがわかった。母親の年齢、母乳を与えた期間などの因子を調整後もこの関係が認められたという。さらに、新生児の臍帯(さいたい)血に含まれるオメガ-3脂肪酸の濃度が高いと、視覚と手の協調がよいという関係も有意にみられた。
著者らは、このデータが、妊娠後期20週に比較的高用量の魚油を摂取しても安全であるばかりでなく、有益な効果が得られる可能性も示すものだとしている。米エール(コネチカット州)大学医学部予防研究センター長のDavid L. Katz博士は、この結果が視力、協調運動、認知力のいずれに対する効果を示すものなのかは未だわかっていないが、乳幼児の健康にオメガ-3脂肪酸が重要であることは確かだと述べている。至適用量や妊娠中の摂取による長期的な影響を明らかにするにはさらに研究を重ねる必要があるが、Katz博士自身、妊婦にも妊婦でない患者にも1gの魚油サプリメントを1日2回摂取するよう勧めているという。