夜間の高血圧は日中の認知力低下を来す
昼間の活動が不活発なのは、夜間睡眠中の異常な高血圧が原因かもしれない。正常な場合、血圧は睡眠中に下降するが、この夜間の血圧下降がないと、認知力の低下をもたらすという報告が、フィラデルフィアで開催された米国腎臓学会(ASN)年次集会で発表された。
米メイヨークリニック医科大学ロチェスター校(ミネソタ州)のGary L. Schwartz博士らは、平均年齢63歳の男女389人に24時間自由行動下血圧測定(ABPM)器を装着してもらった。全員について注意力や作業遂行の速さなど基礎的な認知力を検査し、診察室での血圧測定と自由行動下血圧測定による結果を比較した。
その結果、夜間血圧が高い被験者は認知機能検査で得点が低かった。また、正常な場合、睡眠中の血圧は10〜20%下降するが、この血圧下降がみられない被験者でも低得点だった。認知力の低下は夜間の血圧変化にのみ関係し、診察室測定や24時間測定による日中の血圧値には関係しなかった。
米国心臓協会(AHA)によると、米国人の3人に1人が高血圧だが、頭痛、めまい、鼻血などの症状が進行しないとわからないため、その3分の1は自分が高血圧と気づいていないという。高血圧疾患は「サイレント・キラー(静かなる殺人者)」とも呼ばれ、管理せずにいると臓器を傷つけ、脳卒中や心臓発作、心不全、腎不全リスクを高める。
小さくて携帯可能な24時間血圧測定器により、診察室ではわからない夜間の血圧異常が見つかることは長く知られており、今回の報告はその重要性を強調するものだという。しかし測定器に保険が適用されることはほとんどなく、患者は自費で買わねばならない。Schwartz博士は今回のような研究で、この状況を変わることを期待している。患者側の(血圧測定の)遵守については問題がなく、患者が装着を了承する率は非常に高いという。
アルバート・アインシュタイン医科大学(ニューヨーク市)のHillel W. Cohen博士は、興味深い報告と認めつつも、この装置はまだ扱いにくく、もっと記録が簡単にできるようになれば便利な道具となると指摘。また血圧リスクをより正確に予測できるのは確かだが、24時間血圧の解釈は単純なものではなく、毎日測定するのも難しいことから、これはすでに高リスクである人のためのものとみなしている。