食品製造に用いられる酵素がセリアック病患者を救う
セリアック病は小児脂肪便症とも呼ばれ、小麦などに含まれる不溶性の蛋白(たんぱく)の一種であるグルテンへのアレルギー性反応により、小腸内で変化が生じ、吸収不良を来たす遺伝性の自己免疫疾患で、小児だけでなく成人でも発症する。
オランダ、ライデン大学メディカルセンター免疫学教授のFrits Konig氏らは、AN-PEPと呼ばれる食品の製造過程で用いられる酵素を活用して、グルテンを胃内で分解させることにより、小腸でのアレルギー反応の抑制が可能であることを、米医学誌「American Journal of Physiology - Gastrointestinal and Liver Physiology」オンライン版掲載の研究で明らかにした。
Konig氏によると、セリアック病と診断されると、パンやシリアル、パスタ、クッキーなどグルテンを含む食品をすべて避ける必要が生じる。
セリアック病の治療に用いられる酵素の研究は、他の施設でも行われており、最近、米スタンフォード大学(カリフォルニア州)の研究者は、グルテンを消化する際に起こる免疫システムの炎症反応を防ぐ酵素EP-B2を発見したことを発表した。Konig氏の研究も含めいずれも培養レベルのもので、ヒトでは検証されていない。
Konig氏は、EP-B2は胃内の強い酸性の環境では生き残れないと考えられるが、AN-PEPは胃の中でも生き残り、「グルテン蛋白を極小破片にまで分解して炎症反応を抑制する」という。さらに、AN-PEPは、すでに食品加工に使用されている黒色アスペルギルスという真菌由来の酵素で、副作用の心配もないとしている。研究の次のステップはヒトでの検証となる。
米ニューヨーク大学メディカルセンター消化器病学のRoshini Rajapaksa博士は今回の研究を、「治療の大きな進展となり、セリアック病で苦しんだり、ライフスタイルを変更しなければならない多くの人にとって助けとなる」と評価する一方で、「現時点では、まだ試験管レベルの段階であり、潜在的な副作用については何もわかっていない」と慎重な態度を示している。