磁気健康器具には治療効果なし
雑誌やインターネットで健康問題、特に痛みを治療すると宣伝されている磁気(マグネット)健康器具は、何の治療効果も証明されていないという論説が、英国医師会誌「British Medical Journal(BMJ)」1月7日号に掲載された。
著者である米ドレクセル大学(ペンシルベニア州)の物理学教授Leonard Finegold博士と、米Kaiser Permanenteメディカルセンター(カリフォルニア州)の産科婦人科医師Bruce L. Flamm博士は、「派手に宣伝され、販売に規制もないので、一般の人が効用を信じるのも無理はない。しかし発表された研究では理論的、実験的にも治療効果に反する点が強調されており、たとえ治療効果があっても小さいのは明らか」と述べている。
ブレスレット、靴の中敷(インソール)、手首や膝のサポーター、背や腰、首に巻く姿勢矯正ベルト、枕、マットレスなどの磁気健康器具に、米国で1年間に3億ドル(約342億円)、全世界で10億ドル(約1,140億円)もが費やされている点に両博士は憤慨したという。
治療効果ありとする対照研究も疑問だという。磁気健康器具の場合、装着していることが明白で、医師、患者共に誰が本当の治療を受けているのか知らないことが条件である「二重盲検研究」を行うことがほとんど不可能だからである。磁気による自己療法で、隠れた病気が治療されないまま放置される心配もある。
しかし糖尿病末梢神経障害などの患者を対象に、磁気療法の研究を広く行っている米ニューヨーク医科大学のMichael I. Weintraub博士は、適切な器具を適切な期間使えば、症状によっては有効と反論する。糖尿病患者で行った対照研究では、磁気健康器具の装着群で、薬剤と同等あるいはそれ以上の効果が得られたという(対照群は偽の器具を装着)。今回の論説が、強力な磁気を用いるMRIには「有害性も治療効果もない」とする点にも反対で、MRIに曝露された被験者の18〜20%が口の中の金属味や病状の一部の悪化などマイナス効果を訴えたという。
磁気は磁場に変化を生じるので、なんらかの物理的影響があることはFlamm博士も認めているが、商品がうたう効用には、まったく根拠がないことはほぼ確かだという。Finegold博士は、磁気健康器具を買おうと思っている人に、こう助言する。「一番安いものを買うように。それで財布の痛みは和らぐ」。