音楽療法が健康や治癒を促進
医療器具には突き刺したり刺激したりするものが多いが、それが顔をしかめずに済む、弦や太鼓と知れば患者は大いに安心するだろう。
音楽療法とは、音楽を利用して治療効果を得ようとする手法だが、ここでの音楽は、ストレスを軽減し、痛みを和らげ、抑うつ症状を癒し、吐き気を抑え、睡眠を改善する道具とされている。
米インディアナ大学-パデュー大学(インディアナ州)音楽療法助教授のDebra S. Burns氏は癌(がん)患者に音楽療法を採用しているが、「癌のストレスに対処しようとする人を助ける、本当に創造的な手法だ」と述べている。
米国音楽療法協会(AMTA)によると、音楽の治療効果はかなり以前から記録されている。第一次、第二次世界大戦時、身体的、精神的外傷を受けた入院中の兵士をミュージシャンが訪れたことにさかのぼる。カリフォルニア州で音楽療法を実践するBarbara Reuer氏は「医療関係者がその際に、退役軍人が音楽によく反応することに気づいた」と述べている。
現在、AMTAの音楽療法士は約5,000人で、病院、老人ホーム、精神診療施設、介護センター、ホスピスなど、様々な現場で治療を行っている。セッションの内容も現場同様に多様だが、Reuer氏は、抑うつや痛みなど、患者の症状に関する簡単な審査から始める。その後、緊張をほぐすために最近数十年のトップ40曲が掲載されている音楽本を患者に渡すが、同氏は「通常は、その中に患者の思い出の曲が1、2曲あり、療法士と患者との関係を築くことができる」という。
時には療法士が歌って、患者にも一緒に歌うように促したり、療法士が患者に簡単な楽器で音楽を奏でさせたりする場合もある。
同氏らのチームは、2万人の患者を対象に、音楽療法の前後に不安症状、痛み、吐き気に関するデータを収集した。これにより、他のどの手段より音楽療法で効果の高いことが明らかになった。同氏は「症状の軽減に関していえば、全員が何らかの効果を得た」と述べている。