運転中の携帯電話は飲酒運転より危険
携帯電話で話しながらの運転は、事故を起こす確率が飲酒運転よりも高いことが明らかになり、人間工学誌「Human Factors」夏号に掲載された。
米ユタ大学心理学助教授Frank Drews氏らによるこの研究では、運転シミュレーターを用いて、40人の被験者がペースカーの後について所定のコースを走った。被験者の一部は携帯電話で話しながら運転し、一部は酒気を帯びた状態(法律で飲酒運転とみなされる最低値、0.08%の血中アルコール濃度)、残りはこれらの障害のない状態で運転した。
その結果、携帯使用者は、障害のない状態での運転に比べ事故を起こす可能性が5.36倍であることがわかったほか、携帯使用群では追突事故が3回みられたのに対して、ほかの2群では事故の記録はなく、携帯は飲酒運転よりも危険という結果となった。
Drews氏によると、飲酒運転ではドライバーが攻撃的になる傾向があるが、携帯使用では反応が鈍くなるという。ブレーキやその後の加速の反応時間が遅れ、交通の流れ全体に影響する可能性もある。また、手に持つタイプの携帯でもハンズフリータイプでも運転能力に差はみられず、運転中は意識が運転ではなく会話に向いており、視覚情報の50%が全く処理されないこともわかった。携帯使用による事故がそれほど増えないのは、他のドライバーが携帯使用者のミスを補っているためだとDrews氏は推測している。
米高速道路安全局(NHTSA)のRae Tyson氏も携帯使用の危険性を認めている。Tyson氏によると、電話の相手はこちらの状況を全く考えていないため、携帯での会話は同乗者と会話するのとは訳が違うという。「調査を実施するたびに運転中の携帯の使用者が増えている」といい、パームパイロットやBlackberryなど携帯情報端末(PDA)の利用者が増えていることも新たな問題だとTyson氏は述べている。
一方、米携帯電話業界団体であるセルラー通信工業会(CTIA)のJohn Walls氏は、「事故は携帯電話が起こすのではなく、人が起こすものだ」と反論。運転中に生じるあらゆる障害に対処する訓練を行うことが最も有効で、特定の行為に的を絞って規制しても、誤った安心感を生むことになるだけだと指摘している。