歯周病は糖尿病や心疾患にも影響
口腔内の衛生に留意することは、歯を白くして虫歯をなくすだけではなく、全身の健康も向上させることが、多数の研究で明らかにされている。こうした研究は、同時に歯周病がさまざまな健康障害を引き起こすことを示している。
歯周病は、歯肉への細菌感染で発症する疾患で、最も軽度なのが歯周組織に炎症が起こる「歯肉炎」。より深刻なのは、炎症が歯を支える組織に影響を与え、最終的に骨に達する「歯周炎」で、成人後に歯を失う主な原因となっている。
歯周病が他の疾患に影響する一因としては、口腔細菌が血液中に浸入し、別の部位の組織に炎症を起こすことが考えられる。また、口腔感染が免疫システムの炎症反応を引き起こし、体の他の部位に悪影響を及ぼすことも疑われている。
いくつかの信頼できる研究が、歯周病を治療することで糖尿病患者の血糖値が正常値に戻ることを明らかにした。また、米ニューヨーク州立大学歯学部口腔生物学教授のRobert Genco博士は、長期療養施設(ナーシングホーム)入所者の呼吸器疾患が、歯周病の治療により減少するとしている。同博士は「これらすべては予備的研究であり、歯周病が病因か否かは明言できないが、関連性は無視できない」と述べている。
米ノースカロライナ大学歯学部歯周病学教授のSteven Offenbacher博士は、歯周病の炎症が早産を引き起こす重要な役割を果たすという。「有機体(微生物)は血流に侵入することが可能で、それにより胎児や胎盤に炎症が発生する。それが胎児に負担を与えて早産が促される」と述べている。研究グループは、妊婦1,020人の口腔衛生を調査し、中等度から重度の歯周病の妊婦(14%)は、歯周が健康な女性に比較し、早産リスクが2倍高いことを明らかにした。
Genco博士は「歯周病は目立った兆候のない静かな疾患で、罹患していることに気づかない人が多い」という。糖尿病、呼吸器疾患、心疾患患者や妊婦を診療する医師は、治療対象の疾患に歯周病が与える影響を理解していれば治療に役立つと述べている。