調合乳の鉄分がパーキンソン病に関与
乳児用調合乳で育った乳児は高容量の鉄分を摂取しており、成人後のパーキンソン病リスクを上昇させる可能性のあることが、マウスの研究で明らかにされた。
米医学誌「Neurobiology of Aging」オンライン版6月15日号掲載の研究で、米バック加齢研究所(Buck Institute for Age Research)のJulie K. Andersen氏らは、生後10〜17日のマウスで実験を行った。これらマウスの脳の発達度は、生後1年のヒトの脳に相当する。マウスはその後、2、12、16、24カ月で解剖され、パーキンソン病に関与するドパミンの生成を行う脳の黒質(SN)部位の神経細胞破壊が評価された。
研究報告によると、2カ月目までにSN部位における鉄分のレベルが有意に増加。マウスが「中年」(12カ月)に達すると、神経細胞破壊の兆候が顕著になり、16〜24カ月(ヒトでは60〜80歳)では神経細胞の損失が明白になった。Andersen氏は「これはマウスでの実験結果であり、ヒトでの疫学的検証を待つ必要がある」と述べている。
しかし他の専門家は、調整乳とパーキンソン病を結びつけることに慎重だ。米カリフォルニア大学アーバイン校小児科臨床学教授のFrancis M. Crinella氏は、乳児用調合乳には、母乳の主成分で鉄分吸収を助けるラクトフェリンが欠乏しているという。ラクトフェリンがなければ、大量な鉄分を全て吸収することは不可能で、鉄分過多になりにくい。
また、米国の業界団体International Formula Council (IFC)スポークスマンのKeith Keeney氏は、研究はパーキンソン病と乳児用調合乳中の鉄分とのつながりを証明できていないという。
同氏は「研究でマウスに投与した鉄分は、体重換算した乳児が摂取する調合乳より少なくとも6倍多く、鉄分の形状は調合乳で使われるものとは異なる。乳児用鉄分強化調合乳は、鉄欠乏性貧血を実質的に撲滅した米国の公衆衛生上でも主な成功例と考えられている。こうした重要な発展や乳児の正常な成長を、極端に高容量の鉄分を使ったマウスの実験を元にリスクにさらすのは不適切。この報告を元に乳児の栄養補給(授乳)を決めるべきではない」と反論している。