しわの多い喫煙者は肺疾患のリスク大
顔にしわの多い中高年喫煙者は、しわの少ない喫煙者に比べ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)にかかる可能性が5倍であることがわかったという。英王立Devon & Exeter病院のBipen Patel博士によるこの研究は、医学誌「Thorax」オンライン版6月14日号に掲載された。
COPDは、肺気腫や気管支炎を含む進行性の慢性肺疾患で、米国では約1,350万人が罹患し、世界保健機関(WHO)は2020年までにこの疾患が世界の死亡原因第3位になると予測している。喫煙がCOPDの主な危険因子であることがわかっており、喫煙者は皮膚の老化が早いことも知られていることから、Patel氏らは、COPDと皮膚のしわに対する共通の感受性が存在するとの仮説を立てた。
研究グループは、COPD患者68例(45.6%)を含む中高年の喫煙者および元喫煙者149例のデータを分析。被験者の83%には顔のしわが全くないか、少ししかみられなかったが、17%には多くのしわがみられた。しわが少ない人に比べ、しわの多い人は、肺の強度および機能が有意に低かったという。また、しわの多い人は、COPDリスクがしわのない人の5倍で、さらに重度の肺気腫のリスクは3倍であった。
米国肺協会(ALA)のNorman Edelman博士は、この結果について「生物学的に説得力がある」としつつも、「患者の教育には有用かもしれないが、肺疾患を検知するには簡単な呼吸検査をすれば十分で、しわを見る必要はない」と述べ、この研究から何らかの臨床的意義を導くことについては懐疑的な姿勢を示している。
COPDとしわの関連性についての機序はわかっていないが、Patel氏らは遺伝的なものではないかと考えている。「肺および皮膚の弾性組織(コラーゲン、エラスチンなど)の損失によるものである可能性もあるが、裏付けは得られていない」とPatel氏はいう。Edelman氏は、この知見が患者に直接利益をもたらすというよりも、今後の研究を重ねる上で、肺でなく皮膚をモデルとして用いることができるなどの点で有用性が大きいだろうと述べている。