西洋風生活は清潔すぎて病気に弱い
研究室で飼育されたマウスおよびラットを野生のものと比較した研究から、免疫系が自然の病原菌に曝露することによって疾患に対する防御力が形成される、という考えを裏付ける結果が示された。
米デューク大学(ノースカロライナ州)実験外科助教授William Parker氏によると、実験用動物の生活する病原菌や寄生虫のない環境は、西洋社会の衛生的な環境に相当し、一方、野生の動物の環境は、近代医療がなく衛生的な生活を維持するのが困難な社会での暮らしに類似する。過去の研究では、「きれいな」環境で生活する人は、免疫システムが寄生虫などに曝露することがないため、アレルギーや自己免疫疾患になりやすいとの仮説が立てられていた。
今回の研究は、それぞれの環境で生活する動物について免疫グロブリン(Ig)
抗体の分析を行ったもの。自己免疫疾患に関わるIgGおよび寄生虫から身体を守るIgEについて比較した結果、野生の動物は実験用動物よりもIgEのレベルが有意に高く、自己反応性のIgGもやや高いことがわかった。
これについてParker氏は、自己反応性IgGは、衛生的環境下の動物では自己免疫疾患につながり、IgEは無害な抗原に反応するアレルギーにつながるが、野生の動物ではIgGは外部の抗原に反応し、IgEは病原体の抗原に結合し体の防御に働く、と説明する(編集注=この部分は原著を参考に編集部で加筆しています)。この知見は、医学誌「Scandinavian Journal of Immunology」オンライン版6月19日号に掲載された。
米国では約5,000万人がアレルギーをもっており、800万人が1型糖尿病、関節リウマチ、狼瘡(ろうそう=慢性皮膚病変)、強皮症などの自己免疫疾患に罹患している。Parker氏は、「今回の結果は、環境がIgEおよびIgGの産生に深く影響することを示している」と述べている。これは、近代医療をもたない動物が、高レベルの自己免疫様反応やアレルギー様反応を有しており、それによって環境下での未知の因子に対して適切に反応できる、という考えにも一致する結果だという。