降圧薬で先天性欠損のリスク増大
降圧薬治療によく用いられるACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬が、妊娠第1期(妊娠の最初の3カ月間)での使用も安全とはいえないことが示唆された。この薬剤を妊娠第2期および第3期に使用すると先天性欠損の原因となることは以前から知られており、妊娠が判明するとほかの治療法への切り替えが行われていたが、米医学誌「New England Journal of Medicine」6月8日号に掲載された研究から、全妊娠期間を通じてACE阻害薬を避けることが最も望ましいことが示された。
米Vanderbilt大学(テネシー州)医学部小児科准教授William O. Cooper氏らは、1985〜2000年に出生した乳児2万9,507例について、妊娠第1期にのみACE阻害薬に曝露した209例、その他の降圧薬に曝露した202例、妊娠全期間を通じて降圧薬に曝露していない2万9,096例で、最初の1年に認められた主な先天性欠損について調べた。その結果、2.9%にあたる856例の乳児に、心血管、筋骨格、消化管、中枢神経および泌尿器などの先天性欠損がみられ、203例には複数の欠損があった。降圧薬を一切使用していなかった女性に比べ、ACE阻害薬を使用していた女性の子は心血管欠損リスクが約4倍高く、中枢神経欠損も4倍高かった。その他の降圧薬による先天性欠損リスクの増大はみられなかったという。
ACE阻害薬がどのようにして先天性欠損のリスクを増大させるかはわかっていないが、Cooper氏によると、ACE阻害薬がアンジオテンシン酵素を阻害することにより降圧に作用していることから、胎児の臓器が形成される時期にこの酵素が阻害されると正常な形成が妨げられることが考えられるという。
1980〜2000年に承認された処方薬の90%以上は胎児に対するリスクがわかっておらず、判断の難しさが指摘されている。小児の健康を研究するチャリティ団体March of Dimesによると、米国では毎年推定12万人の乳児に先天性欠損が認められ、約70%は原因が不明だという。出産適齢期の女性がACE阻害薬を使用する場合、医師とよく相談する必要がある。