心身療法が過敏な腸症状に効果
米国成人の約15%が罹患している過敏性腸症候群(IBS)の症状が、短期の催眠療法や認知療法で和らげられることが、先ごろロサンゼルスで開催されたDDW2006(米国消化器病週間)年次集会で明らかにされた。IBSは致死性の疾患ではないが、腹部痛、痙攣(けいれん)、鼓(こ)腸、食物不耐、便秘、下痢などを症状とする不快で厄介な疾患。
米ニューヨーク州立大学バッファロー校医学部助教授のJeffrey M. Lackner博士らは、患者59人を10週間か4週間の認知療法コース群と待機群に割り付けた。短期と長期で基本的な治療内容に差はないが、短期コースには自己教育ワークブックが提供された。
患者への指示事項には、IBS患者の特徴とされるストレス習慣(自分を不安にさせ、症状を悪化させるようなマイナス思考など)を止めさせるための知識や、筋肉の緊張を和らげるトレーニングなどが含まれた。さらに患者は、より柔軟な問題解決方法や、リラックスすることを学ぶなど、症状を自分でコントロールする能力をつけるよう奨励された。
その結果、長期治療群の74%で中程度以上の症状改善が認められ、短期群でも73%で同様の改善が報告された。
一方、イエーテボリ大学(スウェーデン)準教授のMagnus Simren博士は2件の催眠療法(患者に自分の腸が完璧に機能する様子を想像させる)の研究を報告。1件は大学病院で患者87人、もう1件は地方病院で48人を対象に実施したもので、いずれのグループも半数が「腸に意識を集中させる」毎週1時間の催眠療法を12週間受け、残る半数は対照群として治療は受けなかった。
治療開始時、直後、6カ月後、1年後に、生活の質(QOL)、不安、抑うつ、腸の症状などが検討され、催眠療法群の52%で著しい改善が認められたのに対し、対象群では32%に改善が認められたのみだった。
催眠療法がIBSに対してどのように効果を与えているかは不明だが、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学・生理学教授のEmeran Mayer博士は、ストレスに対する脳の反応の仕方を変化させ、身体の不快なレベルを軽減するのではないかと述べている。