糖尿病や喫煙が下肢動脈疾患の危険因子
米国で推定800万〜1200万人いるという末梢動脈疾患(PAD)は、末梢動脈が閉塞する疾患で、同じことが心血管で起これば心臓発作などの原因となる。PADでは、閉塞が脚(下肢)の大血管に生じる場合と、小血管に生じる場合があるが、この2種類には決定的な違いがあり、それぞれ異なる危険因子(リスクファクター)があるということが医学誌「Circulation」5月30日号で報告された。
2種類のPADはそれぞれ症状が異なり、大血管に生じた場合、股関節部、大腿部、ふくらはぎに数分で治まる有痛性のけいれんが起こることが多い。小血管の場合は、冷感があり、創傷の回復が遅くなるほか、重篤な症例では切断を要することもある。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医学部教授Michael H. Criqui博士およびフランス、Dupuytren大学病院のVictor Aboyans博士らは、大血管PADの男女403人と小血管PAD患者290人について、研究開始時とその4.6年後に、腕、足首、足の指の血圧をそれぞれ測定し比較した。PADの指標は、足首の血圧が腕の血圧の90%以下、足の指の血圧が腕の70%以下であること。この低下率と、糖尿病、高血圧、喫煙、コレステロール値などこれまでに知られているPADのさまざまな危険因子とが合わせて検討された。
その結果、小血管PADについては、有意な危険因子は糖尿病のみであることがわかった。大血管PADの最も有意な危険因子は喫煙で、喫煙者は非喫煙者に比べ大幅に悪化する率が3.2倍高かった。高コレステロールも重要な指標となるという。大量の飲酒(週21杯以上)および高血圧については明確な指標とはならなかった。
Aboyans氏によると、「最も意外だったのは、大血管PADの進行に糖尿病が無関係であったこと」だという。Criqui氏は、特に糖尿病のある患者については足首と足の指の両方の血圧を測定することが重要だと指摘している。また、今回の結果は、抗凝固薬およびコレステロール低下薬スタチンによる治療を推奨する現行のPAD治療ガイドラインを支持するものであり、このほかアスピリンのような抗血小板薬も有効だとCriqui氏は述べている。