腹部痛と膨張感は卵巣癌(がん)の初期サイン
腹部の疼痛と膨張感が卵巣癌(がん)の初期症状であるという新しい知見が報告された。しかしこれら症状が他の原因でも生じることが多いため、効果的な治療が期待できる早期段階での診断が遅れやすいという。
卵巣癌は増殖が速く、1年で早期癌が進行癌に進むこともある。卵巣癌は1991年から減少傾向にあるが、米国女性では癌死亡の第4位を占め、米国癌協会(ACS)によると、今年(2005年)は約2万2000人が卵巣癌と診断され、1万6,210人が卵巣癌で死亡するという。卵巣癌には末期まで目立った症状がないことから、研究の多くが、そのスクリーニング方法に向けられてきている。
米医学誌「Cancer」10月1日号に掲載の今回の研究は、米カリフォルニア大学ディビス校(UCD)のLloyd H. Smith博士らが、68歳以上の女性約2万人の診断記録を比較したもの。対象の内訳は、卵巣癌1,985人、乳癌6,024人と、年齢をマッチさせた癌でない1万941人。乳癌は疫学的に卵巣癌と類似していることから、追加の対照群として用いられた。その結果、卵巣癌患者の場合、腹部の不快感を訴えていた率が、卵巣癌でない場合に比べて、診断の12カ月前、診断9カ月前ともに2倍であった。
全体で40%の卵巣癌患者が、診断36〜4カ月前に腹部あるいは骨盤部の症状を1回以上訴えていたが、骨盤部の画像診断や卵巣癌マーカーであるCA125(癌抗原125)血清検査を受けたのは、そのうちの25%だけで、多くは腹部画像診断や消化器系検査に回されていた。これらの検査では卵巣癌の診断がつきにくい。一方、卵巣癌患者の54%は、診断がつくまでの3カ月以内に画像診断や血清検査を受けていた。
この研究は、卵巣癌患者の一部は診断前に症状があったことを示しており、適切な検査が行われれば早期診断が可能だとSmith博士は述べている。ただし、こういった症状はよくみられるものの、卵巣癌であることは稀だという。しかし、もし他に原因が見つからなければ、画像診断や血清検査を行うのが賢明だという。他の専門家も、こういう症状がある場合に消化器系の検査を受けるのが悪いわけではないが、もし検査結果が陰性なら、婦人科系の病気を疑うべきであると助言している。