アスピリンの長期服用により一部のタイプの乳癌(がん)リスクが高まる
鎮痛薬のアスピリンを長期間毎日服用すると、あるサブタイプの乳癌(がん)リスクが高まるという報告が、米医学誌「Journal of the National Cancer Institute」6月1日号に掲載された。同じく非ステロイド性抗炎症薬のイブプロフェンの長期間連日服用も、乳癌のリスク増に関与するという。これは両薬財が乳癌リスクを軽減させるとする過去の研究に相反する。
米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)のSarah F. Marshall博士らは、 1995〜1996年の調査開始時に癌にかかっていない22〜85歳の女性11万4,000人について調べた。2001年までの追跡期間で、2,400人が乳癌の診断を受け、そのサブタイプが同定された。
乳癌は、エストロゲンやプロゲステロンの受容体をもつER陽性、PR陽性と、受容体を持たないER陰性、PR陰性のサブタイプに分けられ、受容体の違いにより治療法が異なる。今回の研究で、全体的にはアスピリンと乳癌リスクとの間に関連性は認められなかったが、5年以上毎日アスピリンを服用した場合、ER/PR陰性例では乳癌リスクが80%増加、EP/PR陽性例ではリスクが20%軽減していた。またイブプロフェンを5年以上毎日服用した場合は、乳癌リスクを50%増加していた。
過去の研究で、アスピリンあるいはイブプロフェンを10年以上にわたり、週2錠以上服用した場合、乳癌リスクが28%軽減したという報告があるが、アスピリン、イブプロフェン個々について、乳癌のサブタイプ別では検討されていない。アスピリンの乳癌予防効果について、Marshall博士は「腫瘍組織内ではcox-2と呼ばれる酵素が、腫瘍を成長させるエストロゲン産生を増加させる。アスピリンはこのcox-2の遺伝子発現を阻害する」ことが考えられているという。
今回の研究結果に対し、他の専門医が指摘するように、今後、サブタイプのより詳細な研究、およびライフスタイルが乳癌発症に及ぼす研究が必要である。Marshall博士は現在アスピリンやイブプロフェンを服用している女性は、両薬剤の服用プランを変更すべきでないと注意している。いずれにせよ両薬剤を定期的に服用する場合には、医師に相談する必要がある。