関節リウマチ薬が癌(がん)、感染症リスクを増大
腫瘍壊死因子(TNF)阻害薬による治療を受ける関節リウマチ患者は、癌(がん)および重篤な感染症を発症するリスクが高いことが明らかになった。この研究は、米メイヨークリニック(ミネソタ州)医学部教授でリウマチ科医のEric Matteson博士らによるもので、米国医師会誌「JAMA」5月17日号に掲載された。
現在米国で認可されているTNF阻害薬(生物学的製剤)は、インフリキシマブ(商品名:レミケード)およびadalimumab(同:Humira)の2種類。ともに、関節リウマチの主な一因と考えられている蛋白(たんぱく)質であるTNFを無力化することにより、効果を発揮する。いずれも重篤な感染症のリスク増大をもたらすことがわかっており、以前から薬剤の添付文書にも警告が示されていた(編集部注=日本国内未承認薬は英文表記)。
今回の研究は、両薬剤に関する過去の9つの無作為化プラセボ(偽薬)対照試験において、TNF阻害薬による治療を受けた患者約3,500例およびプラセボ治療を受けた対照群約1,500例のデータを解析したもの。全体で、いずれかのTNF阻害薬による治療を受けた患者の発癌リスクはプラセボ群に比べ3.3倍高く、重篤な感染症の発症リスクは2.2倍であり、低用量で使用した患者に比べ、高用量を用いた患者で悪影響が有意に多くみられた。
研究チームによると、2種の薬剤のいずれかを使用する患者のうち154人に1人が6〜12カ月以内に癌を発症し、49人に1人が3〜12カ月以内に重篤な感染症を発症するという。理由は未だ明らかにされていないが、体が本来もつ感染症や癌細胞に対する防御力が薬剤によって妨げられるのではないかと考えられる。
一方、このリスク増大が薬剤によるものか、関節リウマチそのものによるものなのかは依然として疑問だと指摘する専門家もいる。また、薬剤が原因であるとしても、この薬剤による利益はリスクを上回るという。「関節リウマチをコントロールできている患者の機能的能力は、コントロールしない場合よりはるかに高く、余命も長い」とMatteson氏は述べている。Matteson氏らは、今回と同じ方法を用いて、ほかの薬剤のについても製造販売後の臨床試験を行っていく意向だという。