尿失禁の原因は膀胱攣縮(れんしゅく)
成人の6人中1人に認められ年齢とともに発症率の増大をみる尿失禁。長年にわたって、尿失禁が主に高齢者に発症する理由は膀胱の萎縮にあると考えられてきたが、米ピッツバーグ大学医学部老年医学科の学科長Neil M. Resnick博士らによって、膀胱攣縮(れんしゅく)によるものであることが明らかにされた。大半の患者は膀胱攣縮を抑制することができ、薬剤投与も外科的処置も実施する必要がないケースが多いという。先ごろ米サンアントニオで開かれた米国泌尿器科学会(AUA)年次集会で明らかにされた。
Resnick博士らが尿失禁のみられる女性95例を対象として、膀胱容量、尿道閉鎖圧、尿流量よび排尿筋収縮力に関するデータを比較検討したところ、膀胱および尿道の機能は年齢とともに低下するが、膀胱容量にはほとんど変化はみられなかった。また、ライフスタイルと行動に関する介入を実施すると、尿失禁がみられる患者の3分の2に「劇的な効果」が得られた。膀胱攣縮が起こるのを予測し、攣縮が生じるときに骨盤底筋を引き締めるよう訓練すると、尿失禁が有意に抑制されたという。
マイアミ大学医学部排尿機能障害・女性泌尿器科科長のAngelo Gousse博士は、今回の研究結果に対し、対象としたのが女性95例と小規模であるうえ、60〜90歳がわずか12例である点を指摘し、研究概念はよいが、確証のためには大規模な試験を実施する必要があると述べている。尿失禁を来す傾向が強いのは高齢女性であるからだ。
一方、Beaumont病院(ミシガン州ロイヤルオーク)による米国人男性約2万1,600例を対象とした調査結果では、男性でも女性のように加齢とともに尿失禁を来す傾向が強くなり、前立腺の状態と膀胱の機能低下との間に強い関連性が認められることが明らかにされた。調査の対象とした成人男性のうち、過去数カ月に少なくとも1回尿失禁を経験したことがあると報告したのは9%を超えていた。