熟年における心の健康
職場でのストレスや人間関係の悩み、家庭問題などが原因で、最近、心療内科を訪れる人が増えているそうです。患者さんは若い人だけでなく中高年の人にまで及ぶようで、心の問題は深刻です。今回は、熟年における心の健康についてお伺いしました。
心が不健康になってしまう原因は?
心の健康は、身体の健康に比べると目に見えないところがあるために知られていません。とはいえ高齢になると、生活する上で心の健康が大きなウエイトを占めてきます。高齢期の心の健康に影響を与える要因としては、以下の3つが挙げられます。第1は、高齢期に病気になると、若い時に比べて治るまでに長くかかります。また長期にわたって治療を要する病気にもかかりやすくなります。このため不安感が強くなったり、精神的にも不安定な状態を起こしやすくなります。第2は、損失体験が起こります。例えば体力の低下、配偶者との死別、定年による退職、人とのつながりの損失など。このためにうつ状態を起こし、時には自殺を招くことがあります。第3は、脳の血管系や神経細胞の異常な老化により、痴呆状態になります。高度の精神機能の障害が起きるために、日常生活に支障をきたすことも。85歳以上になると、5人に1人の割合で痴呆状態が見られます。
心の健康を維持するための5か条
次に健康を保持するために、自分でできる生活上の工夫を5点挙げてみましょう。
1 体調を崩さないように努める
「健全な心は健全な身体に宿る」と言われるように、体調を崩さないことが大切です。また疲れ過ぎないように努めること。睡眠も8時間必要というように時間にこだわる必要はありません。人によっては5時間でも充分ということがあります。時には、30分を越えない昼寝を取るのも良いでしょう。
2 食事を規則正しく取る
生活習慣病、特に痴呆を防ぐ上で食生活は重要です。減脂肪、減塩の和食が良いでしょう。腹八分目で過食をしないこと、魚、野菜、そして海藻を摂ること。禁煙や節酒なども心掛けてください。
3 全身を動かす運動を続ける
ゴルフ、テニス、ジョギングなどの運動の習慣は、肥満を防ぐ上で大切です。全身を動かす運動として、気軽にできるのが歩くことです。歩幅を普段の1.5倍くらいにして、両手を振って、スタスタ歩くこと。1日に20〜30分くらい歩く習慣をつけるのが良いでしょう。
4 目先のことにこだわらない
「木を見て森を見ず」という諺があります。樹木は近くで見ると普通の葉っぱに過ぎないのですが、遠くから全体を見ると美しい緑の森に見えるように、距離をおいて客観的に見ると「それほどこだわることでもない」ということがあります。ゆとりをもって、どっしりと構えましょう。
5 腹を立てない
ストレスがあるから腹を立てることになるのですが、腹を立てること自体もストレスになります。イライラして眠れなくなったり、血圧が上がって自律神経に影響して食欲がなくなったり。また、腹を立てて適切とは思えない行動をすると、後で収拾するのが大変です。それ以降の対人関係も気まずくなって、心の健康に良くない結果になってしまいます。そういう時こそ、ユーモアをもって明るい笑いに変える工夫をしてみることです。