地域社会での乳癌(がん)検診による死亡率の低下認めず
乳癌(がん)で死亡した女性のスクリーニング(ふるい分け)検査受診率と、非罹患(乳癌と診断されなかった)女性の受診率に大差がないことが、医学誌「Journal of the National Cancer Institute」7月20日号に発表された研究で明らかになった。
米ワシントン大学医学部(シアトル)教授のJoann G. Elmore博士らは、コミニュティ(地域社会)において乳癌スクリーニングが死亡予防に実際に役立っているか、また生存者は死亡者に比べスクリーニング受診率が高いこととを検証する目的で、ケースコントロール(患者-対照)研究を行った。
全米5地域で、1983〜98年に乳癌で死亡した女性1,351人のスクリーニングデータと、非罹患女性2,501人のデータを比較。その結果、50〜65歳の平均的なリスクを有していた乳癌による死亡女性の69.8%は、診断前3年間にマンモグラフィーか視触診、または双方を受診。一方、同様の年齢、リスクの非罹患女性の受診率は69.2%と、両者間で差がなかった。
また、乳癌の家族歴や生検で乳癌の疑いのある平均以上のリスクを有するサブグループでは、乳癌による死亡率は20%減少していたが、統計学的に有意差を認める数字ではなかった。
Elmore博士は、それでも定期的なマンモグラム(乳房X線像)検診を中止すべきではないと強調する。同博士は、今回乳癌スクリーニングの有用性が認められなかった要因として、地域社会での検診の質が臨床試験で実施されているものに比べ低いこと、さらに治療法の進歩により、検出方法やスクリーニング回数とは関係なく、診断後の生存率が改善していることを挙げている。
ノースカロライナ大学チャペルヒル校内科学教授のRussell Harris博士は、論説で「今回の研究結果は、研究者が研究者に対して語る内容であり、「一般女性がスクリーニング検査を受けなくて良い」と言っているのではない。検討が必要なのは乳癌検査を改善する方法だ」と述べている。
Elmore博士は「スクリーニング検査が完璧ではないことを理解しなければならない。女性は自分の体に関心を持つべきである」と述べ、効果的なスクリーニング検査を受けるには「過去のデータ(画像)と比較できる同一施設が望ましく、また生理が終わり、胸の張りのない状態で受けるのが理想」とアドバイスしている。