成長ホルモンで癌(がん)患児の心臓が正常な大きさに
癌(がん)化学療法などで心臓の成長が止まり、成人後、重篤な心疾患を来すケースの多い患児への成長ホルモン投与により、心臓がほぼ正常な大きさにまで回復することが米国の研究で明らかになった。癌患児のみならず、極小な心臓を有する他の小児にも適用が期待される。
癌化学療法を受けた小児癌生存者の25〜30%は、心臓が成長しないために成人後、心不全や心筋症に至ることが多く、死亡リスクは治療を受けていない小児に比べて8倍高いことが明らかになっている。
マイアミ大学医学部小児科主任のSteven Lipshultz博士らは、癌治療でアントラサイクリン系薬剤の投与を受けた患児34人に、身長を伸ばすために成長ホルモンを投与。適切な身長に達した時点で投与を中止したところ、心拍数および血圧に加え、左心室壁厚の正常化という極めて歓迎すべき副作用が生じていた。投与中止により、これらの測定値が以前の水準に戻ったことから、成長ホルモンの投与は無期限で必要となる可能性がある。
Lipshultz博士によると、小児で心臓移植が必要となる疾患の第1位は心筋症だが、その主要原因の1つが心臓の未成長。その原因の1つとして、化学療法による心筋細胞の死滅や、放射線療法などによる脳の成長ホルモン産生領域の損傷による心筋の未発育が考えられる。こうした患児に対し、注意深い監視を行うことが現在の対処法の主流となっている。
今回の知見は、小児癌の生存者のみならず心臓の小さな他の小児に対する適用も期待されるが、Ochsner Clinic Foundation(ニューオリンズ)血液/腫瘍学部長のJay Brooks博士は、この治療法が限られた小児グループにとって重要であることを強調し、すべての小児に成長ホルモンを投与すべきであるということではない、とコメントしている。研究は医学誌「Pediatrics」6月号に掲載された。