糖尿病性網膜症は糖尿病の前段階でも発症
糖尿病と診断される前段階(プレ糖尿病)の人の8%近くが、失明の可能性を伴う糖尿病網膜症を発症するという報告が、サンディエゴで開催の米国糖尿病協会(ADA)年次集会で発表された。
この研究は、米国眼科研究所(NEI)の資金提供により、糖尿病予防プログラム(DPP)の参加者を対象に行われた。DPPプログラムには、3,200人以上の耐糖能異常(IGT)者、すなわち前糖尿病状態の人が参加している。前糖尿病状態とは、血糖値が正常よりも高いが、糖尿病と診断されるほど高くはない状態を指し、日本では「境界型糖尿病」とも呼ばれる。
糖尿病網膜症は、眼球の奥にある小血管の変化で始まるもので、この研究では2型糖尿病と診断された患者の12%にみられた。
これまで2型糖尿病の発症時期については正確に定義されておらず、そのため糖尿病性の眼疾患発症についても、理解が遅れていた。しかし今回の研究で、糖尿病網膜症が前糖尿病の診断後、平均3年以内に生じることが判明した。このことは眼における変化が、今まで考えられてきたよりもより早く、かつ血糖値がより低い段階で生じることを示唆すると、DDP副会長で米コロラド大学医学部のRichard Hamman博士は述べている。
NEIのEmily Chew博士は「この知見は、新たに2型糖尿病と診断された患者に、糖尿病網膜症の検査を積極的に行うよう奨励することになる。定期的な眼科検診と同様、血糖、血圧、コレステロールの十分な管理も重要である」と述べている。