肥満の胃バイパス術の有益性とリスク
重度の肥満症患者の間で胃バイパス術の評判が高まる一方であるが、決して軽視すべきものではない。
胃バイパス術を受けることを考えているのであれば、手術によって生じる事態を認識しておく必要がある。米国立糖尿病・消化器系疾患および腎疾患研究所(NIDDK)は、患者も医師も本術式の有益性とリスクを慎重に考慮する必要があることを教示している。
有益性:
・大半の患者は手術直後急激に体重が減少し、術後18〜24カ月にわたって減少し続ける。ただし、ほとんどの患者で減量分の5〜10%の再増加をみる。
・糖尿病など肥満に起因する諸症状のほとんどが改善される。
リスク:
・減量手術を受けた患者のうち最大20%に、合併症治療のために追跡期間中に手術を施行する必要が生じる。こうした手術を必要とする合併症で最も頻度の高いものは腹壁ヘルニアであったが、腹腔鏡技術の進歩によってこの問題は解消したものと思われる。
・減量手術を受けた肥満患者の一部に胆石の発生がみられる。急速ないし大きく減量している段階では、胆石発生のリスクが高い。術後6カ月間胆汁酸塩を補充することによって、予防することができる。
・減量手術を受けた患者の約30%が、貧血、骨粗鬆症および代謝性骨疾患などの栄養欠乏を来す。ビタミンおよびミネラルを適宜摂取することによって、これを防ぐことができる。
・出産可能な年齢の女性であれば、体重が安定するまで妊娠は避けること。急速な体重減少および栄養欠乏が胎児の発達に危険を及ぼす可能性がある。